わすれてはいけないよ、ソリブジン事件
(2) ソリブジン発売中止
ソリブジンによって分解が阻害された経口フッ化ピリミジン系薬剤は、5FUの血中濃度が異常に上昇するために、骨髄抑制が増強した結果、死亡患者が出ました。それで安全性を重視した厚生省は、ソリブジンの発売を中止してしまいました。ソリブジンがなくても帯状疱疹の治療薬には、不自由していませんから、要するにあまり意味のある薬剤でもなかった、と言うことかも知れません。
(3) 厚生省の対応策
ソリブジン禍をうけて、厚生省安全対策課は、経口フッ化ピリミジンの使用を抜本的に見直すために、いくつかの対応策を講じました。そのひとつが、抗癌剤市販後研究班を組織したことでした。抗癌剤市販後研究班は、当時の国立がんセンター総長、阿部薫先生とし、大腸癌、乳癌、胃癌を対象とした、臨床研究を推進しました。ソリブジン禍で問題となった、経口フッ化ピリミジン系薬剤のひとつ、大鵬薬品工業株式会社のUFTの術後補助療法における有用性を検討することになりました。私は、乳癌の臨床試験である、NSASBC01試験の研究責任者を任されたのでした。当時、私は若干38才、とても荷の重い仕事でした。いろいろなことがありました。しかし、このプロジェクトを推進する仕事を通じて、ふつうなら定年までかかっても得られないような貴重な経験をしました。
(以下次号)