第11回CRCセミナーがおわりました。CRCとは、Clinical(臨床)Research(研究)Coordinator(コーディネーター:調整、まとめ役)の略。臨床研究まとめ役って、いったいなんなのか、を理解するには、治験あるいは臨床試験についての若干の説明が必要になります。
新しい薬剤や治療方法が、効くのか効かないのか、安全なのか、危険な薬か、役に立つ薬か、薬とも呼べないような、へにもつかないものなのか、を評価するために、人間を対象とした、治療研究をしなくてはいけません。この治療研究のことを治験、または臨床試験と呼ぶのですが、もっと言うと、全くの新薬の試験を治験とよびます。製薬会社は、治験を病院に依頼して、やってもらわなければなりません。会社では、ネズミや犬を使った研究はできますが、人間を対象とした治療研究は、病院でしかできません。そして、病院で治療研究をきちんとやるためには、CRCがいないとできないのです。医師だけでできるものではありません。治療研究に協力してくれる患者さんに、新しい薬がどんな薬か、とか、どのような効果がありそうか、とか、副作用としてどんなものがでそうか、副作用が出たら、どうしたらいいのか、などなど、患者さんに懇切丁寧に説明しなくてはいけません。CRCが活躍が期待されるわけです。また、いつ、どのように薬剤を使用したのかとか、どのような効果がでたのか、副作用はどうか、などを、きちんと記録して、それを残しておかなければなりませんが、そのような記録の作成や保存もCRCが行います。このように、新しい治療方法を正しく評価して、効く薬剤は、なるべく早く世の中に出し、効かないもの、副作用が強くて危険なものは、世の中に出さないようにする、それが治験や臨床試験の目的で、治験や臨床試験をスムーズに行うには、CRCがいないとできないわけです。また、新しい薬剤を開発した製薬会社は、とにかくそれを早く売り出したいから、効く、というデータが欲しい。また、副作用も軽い方がありがたい。ですから、昔は、酒一升をもってきて、先生よろしく、ということで、効果あり、と判断するような医師もいた、という噂を聞いたことがあります。そのようなおかしな事がおきないように、臨床研究が正々堂々と行われるためには、医師一人だけでは、だめで、CRCが第三者として関わりをもつ必要があります。ちなみ看護師、薬剤師、臨床検査技師、医師などの資格をもった医療職が、特別なトレーニングをうけて、CRCになることができます。
というわけで、我々、CSPOR(→http://www.csp.or.jp)では、臨床試験を実施するという活動と並行して、CRCのためのトレーニングプログラムとしてセミナーを6年前から実施してきました。だんだん、参加者が増えてきて、今年は、婦人科グループとの共同運行にしたので、婦人科医も多数参加、CRCの数、質ともに飛躍的に向上してきています。CRCなしで臨床研究は実施できない、という時代になってきたし、CRCは完全に市民権を得たように思います。また、かつては、あちこちの集団、グループがCRC勉強会やセミナーをやっていましたが、だんだんと、どこも続かなくなって、内容的にきちんとして、多くの優秀なCRCを排出しているCSPORだけが、CRCセミナーとして存続しているわけです。そして優秀なCRCがいる病院は、臨床研究のみならず、研究以外の医療のレベルも飛躍的に向上しています。これからも、CRCセミナーのいっそうの充実をはかるつもりです。