採点 電子カルテ


電子カルテが本格稼働して1ヶ月が経過しました。総合点は65点、どうにか合格、というところでしょうか。カルテの所見欄、SOAP:S(患者の主観的訴え)、O(医療者からみた客観的所見)、A(病状、経過の評価、診断、判断)、P(投薬、検査、経過観察、他院受診などの医療計画)、については、様々ツールもあり、画像もあつかうことができ、とても便利で、申し分ありません。過去所見欄も、時系列で表示され見やすく、前回の検査実施日なども容易に検索できます。本日所見と過去所見、これらのウインドウが画面の左側に上下に並びます。右側には、薬剤処方、検体検査、画像検査、超音波検査など、実施した医療行為と、それにより発生する診療点数が表示されます。導入した電子カルテは、これらの医療行為をすべて「処方」という呼び方をします。我々は「処方」というと、薬剤処方のことを意味すると思っているので、検査や画像診断まで、処方と呼ぶことに、違和感を感じましたが慣れました。
 
入力は、キーボード、完全にブラインドタッチでできますので、患者さんの顔を見ながら入力することは、いとも容易です。よく、患者さんから「先生は、コンピューターの方をずっと見ていて、私の顔を見てくれない」という不満を聞くことがありますが、私の場合、それは全くありませんね。
 
当院の電子カルテの決定的な弱点は、 
「計画的外来診療を支える未来予約機能がない」
という点。これが、決定的な不満です。未来予約とは、来週受診時に、診察前にレントゲン写真をとる、とか、抗がん剤治療を、前の週にオーダーしておいて、薬剤室でも、準備しておく、というようなことです。また、再来予約機能が全くのお粗末です。これは、診療所の診療形態が、計画的に行われるのではなくって、「具合がわるいから受診する」というような、かぜ、はらいたなどの急性疾患対応、「薬がなくなったら来て下さい」という形態の慢性疾患対応、が普通の姿であり、予約という概念が乏しかったためでしょう。このような、「未来予約機能」がない点は、外来抗がん剤治療を行う浜松オンコロジーセンターでは、致命的な不備、と感じます。しかし、診療所バージョンでは、未来予約ができるシステムは、私の知る限りは、ありません。一方で、最近、厳しく禁止されている、薬のみ、という、無診療投薬が、やりやすいようにできているのは問題でしょうね。社会保険事務所などでは、「患者を診ずして投薬するなかれ」ということを徹底しようとしていますが、街の診療所では、未だに薬だけとりにきて、再診料、慢性疾患指導料をとっているところが、後を絶たないと聞いています。いってみれば、電子カルテは、このような、いきあたりばったりの悪しき診療習慣に合わせて、チューンダウンしている、と言えるのではないでしょうか。
 

投稿者: 渡辺 亨

腫瘍内科医の第一人者と言われて久しい。一番いいがん治療を多くの人に届けるにはどうしたらいいのか。郷里浜松を拠点に、ひとり言なのか、ぼやきなのか、読んでますよと言われると肩に力が入るのでああそうですか、程度のごあいさつを。

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。