紹介状を診療情報提供書という小役人言葉で呼ぶことが多くなっています。同様のことは、懇親会が情報交換会になったりなどもあります。かつて、国立がんセンターに勤務していたころ、首都圏のある市立病院に患者さんをお願いしたことがありました。そうしたら、その院長から、大学の医局の後輩である国立がんセンター病院の医長に「おまえのところの若い医者が電話もなしで紹介状一枚送りつけてきて患者を紹介してきた。」とお叱りがありました。紹介状に関しては、「ワープロで書いた紹介状一枚送りつけてきて患者を紹介してきた。」とか、「ファックスで患者を紹介してきた。」など、時代背景を感じさせるような教育的指導を頂いたこともありました。
現代は、紹介状はご機嫌伺いのご挨拶ではないので、ワープロでもファックスでも、用が足りればよかろう、ということだと思います。電話で一言、こういう患者さんをお願いしましたのでよろしくお願いします、と連絡するのもいいとは思いますが必須ではないでしょう。いずれにしても、時代と状況にマッチした礼儀のエッセンスが含まれることは必要だと思います。
最近、セカンドオピニオンで来院する患者さんの中で、宛名なし紹介状を持ってくる方が目立ちます。中には、かなり使い込んで、しわしわになったものをお持ちの患者さん、同じ文面のものを十枚以上も持っている方もいます。これは患者さんがコピーしたものか、それとも担当医が大量発行したものかわかりません。「宛名なし」や「ご担当先生御机下」というのは、癌難民を発生させる原因のひとつではないかと思います。患者さんを紹介するということは責任を持って相手先医療機関に依頼するということですから、所属、診療科、フルネームでの医師名を書く必要があると思います。また、紹介状の署名がへたくそで読めないのも困りものです。