ゆがんだ医療


新しい医療機器を導入すると、従来の方法に比べると「すごーい!」というような効果が得られる場合が確かにあります。しかし、バカとはさみは使いよう、というのはまさにこのことで、「トモセラピー」がいい例です。トモセラピーとは、放射線照射装置で、CTスキャンのような形をしており、ドーナッツの輪から回転しながら放射線が照射され、機械の中に横になった患者がベッドごと出し入れされながら、病変に放射線が集中的に照射されるため、正常組織には影響が少ないという、優れものではあります。脳転移など、本来放射線照射が有効な場合には、卓越した有用性を発揮するでしょう。価格も5億円ぐらいする、お高い機械です。そのため、導入した医療機関では、よほど運用資産に余裕がない限り、元をとらねば、と対象患者を増やそうとするわけです。
HER2強陽性の乳癌、多発肺転移の患者さんが、マスコミで紹介されたトモセラピーを知り、治療を受けに行きました。その病院では「ペットで見つけた癌をトモセラピーでやっつけるので、どこにがんが潜んでいてもみつけてたたきのめして、完治させることができる」として5億円の設備投資を回収すべく、全国から広く患者を集めています。それで、その患者さんは、肺転移に7か箇所、トモセラピーを受けました。しかし、終了後、1ヶ月足らずで、別の転移が出現、また、トモセラピーをやったほうがいい、と言われ、もとの主治医に相談したところ、浜松オンコロジーセンターでセカンドオピニオンを聞いたら、ということになり、私のところにいらっしゃいました。
賢い読者なら、私が何を言いたいか、おわかりのことと思います。久しぶりに「いっか~ん!!」 ハーセプチン治療を開始し、肺転移は当然のごとく消失しています。「乳癌の肺転移には手術も放射線照射もやってはいけない 推奨グレードAAA」。しか~し、肺転移、肝転移、骨転移に対して、不適切なゆがんだ医療がまだまだ横行しています。みなさん、ご用心くださいませ。
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投稿者: 渡辺 亨

腫瘍内科医の第一人者と言われて久しい。一番いいがん治療を多くの人に届けるにはどうしたらいいのか。郷里浜松を拠点に、ひとり言なのか、ぼやきなのか、読んでますよと言われると肩に力が入るのでああそうですか、程度のごあいさつを。

“ゆがんだ医療” への 1 件のフィードバック

  1. お初にお目にかかります。私事、北海道帯広市の北斗病院で日本1台目のTomoTherapy運用に携わっている小田京太と申します。先生のお顔はPRICRA-BCのキックオフミーティングで初めて拝見し、浜松オンコロジーセンターのホームページも日々の診療の参考としています。さて、ブログは今回始めて拝見し、この記事があり自戒の念も込めて読みました。当院では来院される患者さんの多くがstage4であり、転移巣治療のために来ると言っても過言ではありません。面談時には転移の治療方針は全身療法が第1選択であること、局所療法たる放射線治療(TomoTherapyであっても当然ですね)は局所制御(症状緩和を伴えばなお良い)であり根治性(生命予後)を上げる事を一切約束するものではない事を説明するのですが、理解できる人、所謂癌難民であり全身療法の選択肢はすでにないと説明されている人、参加する事に意義を見出そうとする人と様々であり、苦心している状況です。個人的にはTomoTherapyは従来の放射線治療の質を底上げを目指すべき機器(ライナックが60点照射ならTomoTherapyは80-90点照射)であり、あまり変な評判が流れる事は好ましい事ではないと思っています。先生のようなご高名な腫瘍内科医には先進医療機器(特に放射線治療機)に対するご意見を一度賜ってみたいとも考えていますが如何でしょう?

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