最近、医学部学生とか、研修医と接する機会が多くなり、新たな刺激を受けることも多い毎日です。臨床薬理学実習では浜松医大6年目の学生が毎週二人づつ、週1日、外来研修に来ます。臨床薬理学のポリクリとして来るので、薬のことを勉強したい、という内科系、小児科系を志す学生が大部分です。俺、外科志望なんで、難しい薬の事とかよくわからないっす、でも、手術好きっす、みたいなバカは来ません。患者で使用している薬剤について、その理屈を学ぶ、これが、臨床薬理学ですから、どのような、作用機序で? どのように吸収され?どのように体の中に分布し? どのように分解され? どのように体外に排泄されるの? とか、抗癌剤だけでなく、内科で使うスタチンとか、ARBとか、抗生物質とか、診療の合間に、学生に尋ねます。愛情を持って尋ねるのですが、わからなくて、どぎまぎするのを見るのもこれも楽しいです。それで、薬剤添付文書をインターネットで入手する方法を教えます。学生さんは、薬剤添付文書のなんたるかを全く知らないので、読み方や、既知の有害事象と、未知の有害事象など、お話するのです。時たま、薬で皮疹がでたり、下痢したり、熱が出たり、という訴えの患者さんがいるので、この副作用は、既知なの?、と聞くと教えたとおり、インターネットですぐに調べる。それで、「添付文書に載っているので既知です。頻度は5%未満となっているから、結構、多いのでしょうか?」ぐらいは、すぐに答えられるようになります。また、UpToDateや、役に立つインターネットサイトや、EBMの実践方法など、いろいろお話することができます。概して、医学部6年目までの内科系を志す若者はとても真剣に生きているように感じます。しかし、それ以降が問題なのかもしれません。
がん関係の勉強会やカンファレンスが多いので、手術大好きっす、みたいな20世紀型外科医の無精卵(あたためてもものにならない)タイプの研修医によく出会います。私が北海道で研修していたころ、外科のお偉い先生でも、俺たち外科医は、難しいことはわからないから、考えるよりも手が動いてしまうんだよね、とかいって、思慮のない無謀な手術を正当化している先生がおりました。そのようなのりで、一日中、術衣の上下に白衣を羽織り、スリッパで院内をずるずると歩いているような、そんな研修医、これがよくないのです。
Q 先生は、何年間の予定でこの病院に来ているのですか? (研修医に対しても、一応の敬意を表して、先生と呼びます。)
A わからいっす。教授にいけって言われたから来たので、帰って来いっていわれたら、たぶん、帰るとおもいます。
おまえは、あほか!! この医局崩壊の時代に、何を時代錯誤的なことを言っているのか!! 自分の運命を他人に託すようなことをしてはいけない、自分の人生は自分で切り開け!!真剣に生きなさい、と言いたい。
また、カンファレンスでも、意見を言わせると、妙に、おちょくって、くだらない冗談を言い、その場だけを取り繕うとする若者も見かけます。これは、最近のテレビのひな壇芸人バラエティーショーの影響のように思います。その場でうけるような面白いことを言えるかどうか、これが磨くべき芸風だ、みたいな、そんなのりで、おちゃらけて、まあまあまあ、と、その場だけをやり過ごそうとする態度では、事の本質を習得できないでしょう。くそまじめな暗い顔をしている必要はないけれど、若者よ、真剣に生きなさい、わからないときはへろへろせず、わかりません、勉強します、と言いなさい。 自分の付加価値を高める、それが、研修医時代にめざすことです、と言いたい。