2003年7月31日、私は国立がんセンター中央病院を退職し、宮仕えに終止符を打った。昔から国家公務員は自分にはむいていないと思ってはいたが、一度は宮仕えを経験しておくのもいいだろう、という父の勧めもあり、国家公務員を20年も続けてしまった。2003年8月は、丸々1ヶ月間夏休み、久しぶりで自然の中で思う存分養った英気もその後の強烈営利外来ですっかりと消耗してしまった。宮仕えの放漫経営から強烈営利追求医療への180度の転換で、ある種のカルチャーショックを感じたが、それにも2年で見切りをつけ、現在は、自ら経営者の立場もかね、宮仕え放漫経営の良さと悪さ、強烈営利医療の悪さと悪さ、を冷静に見極める力もついたと思う。そのような視点でみると、かつて宮仕えをしていた頃の自分や、現在、大学やがんセンター、公立病院などにいる仲間のぬるま湯的気質を見るにつけ、なんと、燃費の悪い医療をやっているのだろう、とつくづくあきれる。若い人でも、目が曇ってくるのではないかと感じることが多い。野にくだりて学んだことを、どうにか、宮仕えの連中にフィードバックできないものだろうか。