週末は和歌山に講演に出かけた。雪の影響で新幹線からくろしお号への接続がうまくできず1時間遅れのスタートだったが、多数の看護師と若干の薬剤師も参加し、結構盛り上がりを見せた。尾浦正二先生を中心とした乳癌外科グループも元気のいい新人もたくさんいて、さすがに乳癌手術発祥の地だけのことはありますね。というわけで翌日、医聖華岡青洲の里を探訪した。20年かけて、マンダラゲ(朝鮮アサガオ)を中心に6種類の薬草から麻酔薬を作った。その麻酔薬をつかって1804年、老婆の左乳癌腫瘤を摘出した。消毒は焼酎を使って、メスやはさみは火鉢であぶって消毒したそうだ。麻酔は成功した、ということになっており、これを記念して日本麻酔学会や和歌山医大ではマンダラゲの花をロゴに使用している。手術も成功した、ということになっており、日本外科学会は100回記念で、華岡青洲とマンダラゲをあしらった記念切手を発行した。手術を受けた老婆は、術後8カ月で死亡した。これって、手術が成功した、ということで本当にいいのだろうか。問題なく手術は終わったことをとりあえず、うまくいきましたという。今でもそうだ。でも、それは、手術する意義があったというのとは話は別である。確かに絵をみると、局所進行乳癌なので、局所コントロールという意味では、この老婆は手術してよかったということになる。死亡原因はたぶん乳癌の転移だろうと思うけれど、当時はそういう概念はなかっただろう。200年後の今でも同じような概念で手術を考えている外科医は結構多いようにも感じる。腫瘍内科治療は200年たってもまだまだ100%成功という段階には達していない。難易度は高い。有吉佐和子の小説「華岡青洲の妻」を記念館で買ってきて読んだ。温故知新。
先日は足元の悪い中、和歌山まで来ていただいてありがとうございました。
講演はもちろんですが、その後に先生からいただいたアドバイスは、
今後の私の方向性を考えるためにも大いに参考になり、
なにより下がりかけていたモチベーションをあげていただきました。
何年か後に成長した私を報告できたらと思います。