「米国国内での安定した流通を確保するため、海外医師からの注文は制限する。これについて意見があれば、グラクソに言ってくれ。」 こんな内容のメールが、米国の薬局から届いた。その薬局はRXUSAといって、そこからは、10年ぐらい前から、わが国未承認薬を購入してきた。ハーセプチン治験終了後承認前の期間、国立がんセンターに私はいたのだが、厚生省にも確認し、個人輸入の手続きを踏んで、使用したい患者から直接RXUSAの銀行口座に入金してもらい入手した薬剤を使用していた。compassionate use という位置づけと考えている。同様にしてアバスチン、アービタックス、ネクサバール、なども個人輸入した。最近ではハーセプチンが効かなくなった患者にラパチニブを使っている。1ヶ月分で3400ドル、かなりの経済的負担だ。個人輸入の手続きは、以前よりだいぶスムーズに行くようになった。高いお金を払っても使ってみて効果がない、という可能性もある。幸いにして、今まで個人輸入した患者は4-5人いるが全員効果あり。もちろん単剤だ。ゼローダなんて併用不要だぜ。効果があったことを確認してからでないと次の注文ができないが、それからでは、入手が間に会わないという、綱渡り状態での使用継続であるので、それはそれで患者も、また、こちらもストレスを感じる。また、やはり、高価な薬なので、継続して購入することができず、使用を断念せざるを得ない人もいる。それども、どうにかこうにか、いろいろと工面して、ラパチニブを継続しているが、今日、RXUSAから冒頭のメールが来た。うわさによると、ヨーロッパで最近承認されたため、品薄感があるようだ。昨年末あたりのうわさでは、日本では、4月承認、6月から保険で使えるから、ということであったが、今日、GSKに聞いたところ、年末あたりになるらしい、という話。いったい当局のお代官様たちは何をやっているんだ??? 仕事が遅いよ、はっきり言って。個人輸入の道がこのように細くなり、日本での使用は年末までお預け。これじゃあ、八方ふさがりだよ。 優先審査品目が5つも6つもあって、手が回らないということだが、ラパチニブも優先審査対象のはずだ。ますぞえ大臣の横車で、ムコ多糖類代謝異常の薬がくりあげになったりして、そのしわ寄せという話もある。まあ、とてもまれな疾患だから、審査も進まない薬剤ということもあっただろう。先日、韓国からセカンドオピニオンを求めてやってきた肝臓がんの患者がネクサバールを使っていて効果がでていた。これではセカンドオピニオンもなにもあったものではない。あちらのほうが進んでいる。「ケンチャナヨ(大丈夫ですね)」でお帰り頂いた。日本では、ネクサバールはやっと腎癌治療に承認されたばかりだ。
いまや、情報はインターネットで瞬時にグローバルだ。ビジネスも同様にグローバル。医学情報もグローバル。なのに、薬剤の承認は、まったくのローカル。日本には医薬品機構という、何のための機構だかわからないような組織が活躍しているため、世界で承認されていないのは、日本と北朝鮮だけ、という冗談のような話が現実だ。いったい何を考えているんだ、厚労省は!! っていうと、その昔、威勢のよかったヒューザー小島社長のように、日干しにされてしまうかも。だけど、現実はあまりにも暗く、切ない。どうにかしてくださいな、お代官様。癌対策基本法で癌治療の均てん化と言っているが、それは、日本国内だけが低いレベルで均てんすればいいのだろうか。グローバルな均てん化が本当は必要なのである。
先生はじめまして。
母が乳がんから脳転移になり放射線手術でも再発し毎日苦しい日々を送っています。母は、乳がんから肺に転移をしてハーセプチンで治療をしておりましたが、脳に転移をしてしまいました。
少しでも元気だった母に少しでも戻したい!そんな気持ちでラパチニブを飲ませようと輸入手続も済ませもうすぐ薬が届きます。
そこで先生に質問なのですが、母は、脳の炎症を抑えるためにステロイドを服用しています。
ラパチニブは、朝起きて5錠服用し1時間以上経ってから朝食そしてステロイド服用で問題ないでしょうか?
単剤なので毎日服用で問題ないですか?ラパチニブは、大きいので割って服用しても問題ありませんか?先生の患者の服用方法など詳しく教えて頂けませんか?
他のサイトには、食事と一緒に服用すると効果が高く経済的にコストを抑えられるなどと書いていますが、先生は、どう思いますか?
先生にお答え頂いても責任は、私にあります。誓います。
先生のブログで「今まで個人輸入した患者は4-5人いるが全員効果あり」と読んだ時うれしく思いました。母にも効いてくれと祈るばかりです。そして保険適用まで頑張って薬を買い続け飲ませようと思います。
先生お忙しいと思いますが、返信いただけると非常に助かります。どうかどうかよろしくお願い致します。阿部ma-kenai@hotmail.co.jp
先生、すみません。私は韓国のユンと言うものです。先生のブログに大変申し訳御座いませんが、家族の癌のせいで経済的に苦しんでいる方々に少しでもよい情報を提供して共有してほしいので、ご理解お願いします。今日(2009年2月3日)日本の親友から急に連絡が来て、弟さんが癌で、バイエル社のネクサバールを韓国で購入したいとお願いがありまして、私の兄貴(お医者)に聞いたら大学病院で日本の半分以下(30万円以下)で買うことができることを分かりました。もし、この内容を参照する方がいましたら、是非連絡してください。経済的な負担をできる限り抑えることができると思いますので是非連絡してください。連絡先は、gyun@ubita.com +82-10-3346-4688です。