午前中のgeneral session 3は、昨日の焼き直しシリーズに比べなかなか興味深い演題が並んだ。また、昼過ぎのCase Conferenceも昨年よりは充実していた。
まず、general sessionから、いくつか話題を拾ってみよう。
(1)NOAHトライアルは、HER2陽性症例に対してハーセプチンを含む術前化学療法と、同じ化学療法だけを比較した第三相試験で発表したのはミラノのルカ・ジアーニ。327症例が登録され、ハーセプチンを加えた方が奏効率、病理学的完全寛解率、無病生存率すべて優れており心毒性も問題にならないというもの。日本でも術前化学療法は、進行乳癌に対する治療として標準治療になっているので、HER2陽性ならば、HER2過剰発現を伴う進行乳癌ということで保険診療も問題ない。
(2)VeraTag assayという方法で、HER2タンパク総量あるいは、二量体(タダイマー)を直接測定すると、FISHよりもハーセプチンの効果を推測するのに役立つという発表、これはおもしろい。日本では、この測定検査キットを作っている会社の支店もないので、まだ測定キットが入手できない。保険がとおるとかとおらないとかのずっと、前の段階であるので、この方法が使えるようになるには、またまた、時間がかかる。またまた、フラストレーションが決まる。
(3)次はベイラー大学の売り出し中、去年も紹介したじぇにーちゃんの発表。術前治療で、ハーセプチンまたは、ラパチニブを使用中患者を対象として、PI3キナーゼ活性化の有無、Ki67による増殖活性評価、PTEN発現状況などを1週間ごとにコアバイオプシーを行って検討してみると、ハーセプチンの効果とラパチニブの効果の出方がかなり違うらしい。いずれもHER2タンパクを標的にしているのに、細胞内で起こっていることはこんなにも違うのか、と驚いたし、今後、臨床検査もだいぶ変わって行くのかもしれない。
(4)バンダービルト大学のカルロス・アーティアガの発表は、TGFベータに関連した話だが、秋葉原のオタク的な性格で話がわかりにくいので、はじめから聞いていなかった。かれは1987年にバンダービルトにやってきた。1年は重なっていたのだが、あまり波長があわない。個人的な話ですいません。
(5)最後はNERATINIB。最後にnibがついていることから、小分子の標的薬剤であることがわかる。これは、HER1,HER2,HER3,HER4までに作用するもので、いずれはラパチニブと生き残りをかけた戦いを繰り広げることになるだろう。この試験は、米国と、中国・インドで行われたそうで、ちょっと変わった結果が、ハロルド・バーンスタイン坊やにより発表された。第2相試験で、136症例が対象。約60例はハーセプチンやラパチニブなどが使用済みの症例で、奏効率は26%、約70例は、ハーセプチン、ラパチニブが高くて使えないインドと中国の症例で奏効率は51%。この差は先行治療のありなしによると考えてよいだろうけど、人種差ということはないだろうか。イレッサの肺がんで同じようなことをやったら、きっとややこしくなるに違いない。
今日はこんなところです。後で昼のケースカンファレンスのことをご報告いたしましょう。無線LAN完備のHALL Dよりお伝えいたしました。