アメリカにもこんな医者が・・・


以前、EBMの講演をしたときに婦人科若手(中堅?)の先生に「日本ならEBMの意義を認識させることが大切だということはよくわかりますが、アメリカではみんなエビデンス通りの診療をしているはずなのに、どうしてEBM,EBMと言わなくてはいけないのですか?」という質問をうけた。目から鱗が落ちた、というか目に鱗がささったような思いをしたのを覚えている。つまり、彼は「アメリカの医師は何から何まで完璧にやっている」と思っていたのだ。そういう人って結構いるみたいだということを最近、強く感じるようになった。例えばMDアンダーソン崇拝者たちは、「アメリカでは臨床試験もきちんと行われている、日常診療も、医師、看護師、薬剤師などがエビデンスをしっかりと心得ていて、そこは理想の医療が行われているすばらしい国」と思っているように感じる。サンアントニオ乳癌シンポジウムの昼ケースディスカッションをよく分析してみると、実際は、そんなことありっこない、っていうことがよくわかると思うので、ちょっと視点を変えて紹介しよう。
一昨日と同様、壇上に専門家がならんでフロアのマイクの前にはずらりと列ができている。12時半、音響効果の悪いBallroom Aは今日も満員だが、日本人の姿は昨日よりずっと少ない。フロアからは地域で患者を診ている医師がスライドも画像も使わず、とうとうと経過をのべ、どのような治療をすべきでしょうか、と壇上のパネリストに質問する。二日目も司会はじぇにーちゃん、パネリストはアジア系の画像診断医師(名前不明)、MDアンダーソンの陽気な放射線治療医名前不明)、意地悪そうな腫瘍内科医(女医)(名前不明)、司会者を挟み、けんどーこばやしみたいなアドボカシー関係のおじさん(名前不明)、ジョージ・スレッジ(インディアナ大学腫瘍内科医)、エリック・ワイナー(ダナ・ファーバーがんセンター腫瘍内科医)、テリー・マモウナス(ピッツバーグ大学腫瘍外科医、NSABPの次世代を担う外科医らしい外科医)が並ぶ。「私はアラバマからきた腫瘍内科医です。私の55才の患者は、3年前に1cmの乳癌があり温存手術をしました。ER陰性、PgR陽性で、そのときはHER2ははかっておりません。術後レトロゾールを使用していました。今年のはじめに肝臓左葉に2cm大の転移が見つかり、針生検をしたらER陰性、PgR陽性、HER2(3+)でした。」そこでジェニーちゃんがまとめ、ではジョージとふると、ジョージ・スレッジが、「最近、Breast Cancer Resear and Treatment誌に日本のグループが肝臓切除を報告しているが、全身疾患なので、私は全身治療を考えたい。トラスツズマブはどうだろうか」と。すると質問に立った医師が「実際、エピルビシンとタキソテールを4サイクル実施し、引き続きハーセプチンを使用したが、腫瘍は大きくなるばかりで、4cm、そして5cmになったんです。そこで、左葉を肝切除しました。その後、どうすればいいでしょうか。」するとジェニーチャン、「切除した肝臓のHER2はどうでしたか」、医師は「同様に強陽性でした」と答える。エリック・ワイナーが「私なら、すぐには治療はしないが、いずれリグロウスするだろうから、そのときには、ケイプサイタビンとラパチニブを選ぶだろうね」と。医師は「どうもありがとうございました」といって、席に戻って行った。lこれはまあ、まともだと思う。そして次、「36才の女性、左乳房に違和感を訴えたので、そこを針生検したら、トリプルネガティブの乳癌が出たんだ。その後、いろいろな画像検査をしても病変は見つからない、what would you recommend?(あんたたちゃ、何を勧めるかい?)」、じぇにーちゃんが矢継ぎ早に、「MRIは、PETは?」と訪ねると医師は、negative, negativeと繰り返す。意地悪そうな腫瘍内科医(女医)が、「お宅はちゃんとした乳癌診療施設なの? 病理は専門家がみたの?献体の取り違えじゃあないの?」といじめた。けんどーこばやしみたいなアドボカシー関係のおじさんが、「セカンドオピニオンを聞いたらどうでしょうか」ということで、医師はまだ、言いたげな様子だったが席に戻った。普通は、きちんと画像検査をしてから生検などを進めるのだがいったい、どこを刺したんだろう、といぶかってしまう。そして、もっとひどい医師が次ぎのケース。ケースディスカッションといっているが実は、ひどい医師のケースを取り上げているように、我ながら思えてならない。大介花子のような雰囲気の女医、みかけもそうだが、人の話を聞かないところも花子的。「57才、1998年にER陽性、PgR陰性、HER2陰性、腋窩リンパ節転移4個陽性で、AC→Taxotereをやり、自家骨髄移植を行いました。2006年に胸水がでて、アリミデックス、ファスロデックスを使用しました。その後、骨転移がでて、肝転移もでてきたのでゼローダ+タキソテール使って、腫瘍マーカーがどんどん増えるので次にタキソール+アバスチン使って、それからナベルビン使ったんだけど、肝臓、肺転移は増悪、血中がん細胞は8個陽性だったので、タキソールを使ったら血中がん細胞は消失しました。しかし、脳転移が出てきたので次の治療として、大量ファスロデックスとタキソテールを併用すると血中がん細胞が消えるという情報を聞いたので、どなたか経験があれは教えてください。」 これに対して壇上騒然、場内もざわついた。じぇにーちゃんも声も荒げ、「ホルモン療法と化学療法の同時併用は勧められません。また、大量ファスロデックスの意義も確立していません」と答えると、医師は「ラパチニブはどうでしょうか」と、するとジェニーチャン、やけに冷静に「HER2は陰性ですよね」と確認。しかし医師は「脳転移に対してラパチニブが効くという情報があります。」って。アメリカだってこんなにもひどい、何も考えていない大介花子的あほ女医がいるわけねってことです。いずこも同じ、秋の夕暮れ~、いず~こもおな~じ、秋の夕~暮れエ~、ということでこのセッション終了にしたいと思います。最後までおつきあい頂き、ありがととうございました。

投稿者: 渡辺 亨

腫瘍内科医の第一人者と言われて久しい。一番いいがん治療を多くの人に届けるにはどうしたらいいのか。郷里浜松を拠点に、ひとり言なのか、ぼやきなのか、読んでますよと言われると肩に力が入るのでああそうですか、程度のごあいさつを。

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