サンアントニオ四日目(最終日)の話題


日曜日の午前中にgeneral session 9があって閉会となる。米国内の参加者は午後の飛行機で帰宅し東海岸でも夕方には自宅にたどり着ける。日本に帰るにはいずれにしても明日の便ということになるので、最終日曜日の午後から夜にかけてはパッキング以外やることがないと言えばない。時間の無駄と言えばそうかもしれないが、緩やか時間の流れのなかで日頃できないことをいろいろとできるという利点もある。今日の早朝に帰国した日本人も多い。おそらく今日の最終セッションに出ないで帰った海外からの参加者も結構いるようで、会場のHall Dは昨日よりは閑古鳥がたくさん飛んでいた。最終日に聞き逃せない演題がまとめられてしまったので日曜日まで居残ることになったという冗談交じりの愚痴も聞かれたが、それでも最後まで参加しただけのことはあった最終日であった。
 
それでは、演題をざっとみてみよう。分子標的薬剤、ホルモン剤の比重が増しているとはいえ、細胞毒性抗がん剤の使い方というのもまだまだ重要な問題である。とくに術後に最適な治療レジメンを投入することによりQOLを尊重しつつ治癒を目指す、という難題が我々には課せられているのだ。
 
NSABP B30
は、約5000例を対象にAC(アドリア60サイクロ600)4サイクル→T(ドセタキセル100)4サイクルと、AT(アドリア60or50ドセ60or75:orの後の場合はGCSF)、TAC(ドセ60or50sアドリア60ot75サイクロ600or500:orの後の場合はGCSF)の3群を比較した。結果はAC→TがほかのアームよりもOSで有意にすぐれていた、というもの。付随のQOL研究で卵巣機能抑制効果についての検討も発表された。
 
BCIRG05
は、約3300症例を対象にAC 4サイクル→ドセタキセル 4サイクルとTAC(ドセアドリアサイクロ)6サイクルを比較した試験である。結果はOSでもDFSでも両群間に差はない、というもの。NSABP B30との結果が多少ことなっているが、この試験で用いたTACは6サイクル、NSABPでは4サイクルという差が影響しているのだろうと推測できる。 
 
German Intergroup Triap
では約2000例を対象に、EC(エピルビサイクロまたはファルモルサイクロ)4サイクル→T(ドセタキセル) 4サイクルと、FEC100 6サイクルを比較した試験。最初はもう一アーム、CMFがあったがほか試験の結果をうけて途中でこのアームは廃止された。結果はDFSとOSともにEC→Tが勝っていたというもの。
 
この3試験で、長年ふつふつとしていた上記のレジメンの中では、AC→Tを基本として考えてよい、ということがはっきりしたのですっきりした。終了後、岩田先生曰く「あれだけの試験なのになぜか質問も出ないし、何かあっさりと終わってしまったけど、この状況をどう考えればいいのかな」と、私も同感です。きっと聴衆の大多数もずっと持ち続けていた疑問だし提示された結果が3つともしっかりした試験である上にほとんど同じ方向の結論であったことから、これで決まりだね、納得という安堵感なのではないでしょうか。
 
AC→Tは我々のNSASBC02試験でも検討の対象としているので、いずれのTがよいのか、スケジュールはどうかなどの問題について、INT1199の結果と併せて考えれば:
 
推奨グレードB
(1)3週に1回のスケジュールということならばAC(60/600)あるいはEC(90/600)を3週間間隔に4回行い引き続きドセタキセル(75)を3週間間隔で4回行う。ドセタキセルが75では不足だと思うのならば100にすればよい。好中球減少時の発熱には十分に注意すること。また、むくみ、爪の変化などにも要注意。
 
(2)毎週点滴でもよいということならばAC(60/600)あるいはEC(90/600)を3週間間隔で4回行い引き続きパクリタキセル(80)を毎週1回12週間行う。パクリタキセルは、12回連続でも3投1休でも6投2休でも、どれでもいい。手足のしびれ、爪の変化には注意すること。
 
ということでいかが?
 
最後のFINXXトライアルでは、術後に、T3回→CEF3回と、Tにゼローダを加えたTX3回実施後、CEFのFをXに変えて、CEXとして、発音もセックスではなくケックスに変えたものを3回行う、TX3回→CEX3回を比較したところ、TX→CEXが勝っていたという結果であった。FINLANDは、FINHER試験にしても、この試験にしても臨床試験が活発である。CSPORでも、TX→CEXとEC→Tとを術前化学療法で比較する、というの、どこかでやっていなければ検討してみてもよいかな、と思いました。
 
そのほかの演題は、IGF-1受容体に対する抗体を使用して転移抑制効果を検討したネズミの実験や、PTEN発現喪失とホルモン療法に対する感受性の変化に関するる検討なども興味深いものがありました。IGF-1が乳癌の増殖と関わっているかもしれないとか、シグナル伝達経路のIP3キナーゼからmTORUにいたるあたり、RAD001など新しい標的分子を狙った大変重要なパスウェイに絡んだ話だし、名前もTORUくんなのでとても人ごととは思えない話でした。
 
長いようで短い4日間が終わりました。帰りに村上先生と「サンアントニオはものすごく勉強になるけどものすごく疲れますね。最後まで帰らせてくれないし。でも帰らなくてよかった。4日間を乗り切るにはペース配分が大切ですね。」「そうだよね。じゃあね。」と語り、晴れ晴れとした気分でHall Dをあとにしたのでした。これからパッキングをして4時にはホテルを出なくてはいけません。日本に帰ると忘年会シーズンです。でも今年は喪中なので、年末も新年も地味に行こうかなと思いました。すると遠くで親父の声が聞こえます、「そんなことは関係ないよ、よく学び、よく遊べだな」と。はい! ではそうします。
 
 
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投稿者: 渡辺 亨

腫瘍内科医の第一人者と言われて久しい。一番いいがん治療を多くの人に届けるにはどうしたらいいのか。郷里浜松を拠点に、ひとり言なのか、ぼやきなのか、読んでますよと言われると肩に力が入るのでああそうですか、程度のごあいさつを。

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