すてきなディベート


「遠隔転移のある乳癌なのに原発巣を切除すれば治る、なんていう妄想を抱かせて治療を導いてはいけないと思います。」ー 転移のある乳癌患者の原発病巣を切除する、という試みが、いま、ちょっとしたブームになっている。レトロスペクティブに検討した数本の論文が公表され、最近外科医は俄然勢いづいているが、果たして本当に手術をすべきか? こんなホットなテーマを取り上げた「ディベート大会」が昨日と今日開催された第5回東海・北陸乳癌会議で展開された。リアリティーに満ちた、専門家といえども決断に迷うような問題を含んだ4症例、各1時間、賛成派 vs.反対派、の立場で土曜日の夜遅くまで1グループ4-5名で話し合い、理論武装しプレゼンテーションスライドを作る。翌朝、8時30分からお昼まで、ルールに従って、激しくも冷静に進められるディベートは、ディベーターも聴衆もとても勉強になった。ディベート大賞は三重大学腫瘍内科の北野先生に決定!! 独断で決定!! 今回のディベーターは、東海、北陸地区の、乳癌診療に携わる、または今後携わりたいという立場の「若手」医師だ。私も、かつては若手と言われた。10年早いといわれつづけてこの30年、いつの間にか古参の立場となったが、この間、心がけてきたことは、原理、原則に基づいて理論を構築し、それを他人に話すことにより、さらに理論展開がブラッシュアップされるということ。エビデンスが不十分な領域で、関連情報を理知的に収集し理論武装し、それを「スピークアウトする」。トレーニング途上の若手はこれが大切だ。この「東海・北陸乳癌会議」は、愛知県がんセンターの岩田広治先生が議長として立案し開催してきた。第4回まではブリストルマイヤーズ主催であったが、コウキョーキの関係で今年からその開催を「NPO法人がん情報局」が担当し運営することになった。来年2010年は3月6日、7日、場所は今年と同じ愛知県民の森で開催する予定。来年からは「中部乳癌会議」と名称を変更、乳癌診療を志す若手医師が対象。参加者は30人ぐらいを予定しています。若手の皆さん、楽しみにしていてください。なお、今回、第5回東海・北陸乳癌会議で使用したスライドは、がん情報局WEB SITE(http://www.ganjoho.org/ )に掲載してありますので、自分なら、どうするか、という立場で考えてみて下さい。

投稿者: 渡辺 亨

腫瘍内科医の第一人者と言われて久しい。一番いいがん治療を多くの人に届けるにはどうしたらいいのか。郷里浜松を拠点に、ひとり言なのか、ぼやきなのか、読んでますよと言われると肩に力が入るのでああそうですか、程度のごあいさつを。

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