QOLを損なわない癌診療を行うポイントとして病院と診療所の効率的な役割分担がある。固形癌の化学療法の9割は外来通院での実施が可能である。ということは癌化学療法をうける患者は、大部分の時間を日常生活、社会生活を送りながら過ごすということになる。以前、このブログに「まるでやくざのなわばり争いのような病診連携の会」についてのひとりごとを書いた。その後、問題意識をもちながら、癌の外来化学療法における病診連携について考えている。癌化学療法における病診連携は次の3型に分類できる。I型:病院外来で化学療法実施、副作用対策を診療所が担当する、II型:病院外来で化学療法の主たる部分を実施、化学療法の従たる部分と副作用対策を診療所が担当する、III型:診療所外来で化学療法および副作用対策を実施、重篤な副作用のため入院が必要な場合、病院が対応する。理想形はIII型、やはり、患者の生活圏内における高機能診療所を主として、その後方支援施設、あるいはインフラストラクチャーとして病院を位置づけるのが良いと思う。病院の下請け的に診療所を位置づけている現在の考え方ではうまくはいかないだろう。
いずれの型においても、患者のための安心、安全の確保が最も重要であるが、診療所、病院においても、しかるべきベネフィットが得られなければならない。病院としてのベネフィットは、限られたリソースを有効活用し、病院としての機能すなわち、外科手術、放射線照射、大規模画像診断検査、ICU、終末期医療の提供などに特化することにより収益構造を保ちながら、求められる医療を提供し、研究、教育にも寄与できる点にある。診療所としてのベネフィットは、地域密着による高品質の医療を提供することによる自己実現と収益構造の確保である。このように効率的な病診連携により癌患者の外来化学療法を実践するためには、患者–病院–診療所がWIN-WIN-WINの関係を築くように配慮しなくてはならないと思う。5月の連休で浜松オンコロジーセンターも4周年を迎える。毎年、この時期には初心に返り街角癌診療構想のバージョンアップに思いを巡らせるが考えれば考えるほどますます、なんて素晴らしい構想を思いつんたもんだ、どんなもんだい!と自我自賛でハッピーエンドだ。よかった、よかった。