吹けば飛ぶような弱小診療所で孤軍奮闘していると病院のエゴにムカつくことがしばしばだ。最近遭遇したゲゲゲのあきれたストーリーです。HER2陽性乳癌でハーセプチンが効かないような場合に効果が期待できるラパチニブ(タイケルブ)がもうじき発売になる。今日、薬価算定会議があった。患者さんにしてみれば待望の薬剤だし我々も心待ちに処方開始の秒読み段階である。ところが、びっくりするような話を聞いた。「うちの病院ではラパチニブが承認されても最初の1年は使用しません。安全性が確認できるまでは、われわれの病院(とある鵜飼で有名な県立病院だが)では新薬は導入しないという病院の方針です。」と言われた患者さんがはるばるセカンドオピニオンを求めてやってきた。家の近くだし県立だし、きっと力になってくれるだろうと今後の診療を託したのに、木で鼻をくくったように「病院の方針」ということで突き放され、患者さんは涙にくれている。この対応は明らかにおかしい。まちがい(1)そのような方針がどうして許されるのか? 新薬は確かに使用経験が少ないから未知の副作用がでる可能性だってある。使用経験を積むのは、では、いったいだれなんだ? 県立病院がやらなくて、どこがやる? しかも、その病院は、がん診療拠点病院なのだ。がん診療の実力はないに決まっているが、拠点病院となっている以上、癌治療の新薬を積極的に導入しないとは何事だ。大バカ者だね。まちがい(2)かりにそのような間違った方針だとしてだ、どうして医師はその方針に従うのか? おかしいと思わないのか。拠点病院としての社会的使命を果たしていない病院に勤務しているその医師の意見はないのか? 病院の方針ですから、としおらしく言うが、それなら、病院の方針にすべてしたがっているのか? 同じようなことが別件でもあった。輸血拒否の宗教団体の患者さんの抗がん剤治療を関西のがんセンターに頼んだところ、そこの腫瘍内科医が、病院の方針ですからお引受けできません、と事務サイドを通じて断ろうとしてきた。その腫瘍内科医は優秀な男でとても信頼できるので頼んだのだが、その対応でこちらも切れた。その腫瘍内科医に直接電話し、「断るのなら自分で患者さんに説明しなさい。しかし、抗がん剤治療をやるのに輸血が必要になったことなんかないのだから、引き受けてほしい。」というと「病院の方針ですから、僕の一存ではどうすることもできません。」と答えた。そこでさらに熱をこめ「いいか、先生を信頼して、他の病院でことわられた患者さんをお願いしているのだから、そこのところ、よく考えてみなさい。医療はそもそも社会的な活動であり、別に滅私奉公をする必要はないが、社会のニーズに対しては責任をもってきちんと答えなくてはいけないだろう。説教を聞きたくはないかもしれないが、もう一度よく考えてみなさい。」
病院の方針というのが間違っていることが多いのは、よく知られた事実です。そういう方針を打ち出すような病院も、医療機能評価でまる適マークをとっているのだから、評価するほうもされるほうも、終わっているね、ゲゲゲのゲッ!!!