病診連携の構想は、常に病院側が原案を作り地域の診療所に「これでいいでしょうか」という具合に諮問される。原案を考える側の病院は、病院のもつ本来の機能とは何かとか、診療所はどうあるべきか、というような本質的な議論や考察を全く行っていない。今の自分の立場で、診療所の先生に業務を分担してもらうとすれば、どのような形になるか、というような、きわめて近視眼的、現実妥協的な形でしか、考えていないのが実態である。したがって出来上がった病診連携パスとかは、残念ながら全く使い物にならない。患者の視点から見れば、はなはだ不便な診療を強いられることになる。
究極の病院機能
病院の機能を究極的に考えれば(1)手術、(2)画像診断、(3)処置入院、(4)分娩、(5)ホスピスケア。(6)二次以降救急医療、(7)放射線照射に限定される。
(1) 手術室、回復室機能をもち、それに付随する医師(外科医、麻酔科)、看護師、薬剤師、検査技師などのスタッフがいればよい。手術をするのは、必ずしも病院医師の必要はない。
(2) PETCT,MRIなどの大規模検査機器および医師(放射線診断医)、看護師、診療放射線技師などのスタッフがいればよい。入院設備は不要。
(3) 処置入院は、胸水、腹水排液など。これは、小手術と考えて(1)に分類してもよい。
(4) 分娩は、在宅でも可能であるが、NICUを使用しなくてはならない、リスクの高い分娩には、医師(産科、新生児科)、助産師、看護師、薬剤師などのスタッフがいればよい。入院設備は必要。
(5) 終末期医療は在宅でも可能である。今後、在宅での看取りがふえてくるだろうから、この機能は診療所に移行できる。
(6) 一次救急は必ずしも病院で提供する必要はない。
(7) 重厚な機器が必要な放射線照射は、病院機能として提供する。通常は、通院、長くて1泊二日程度の入院が必要。
これらの「病院機能」は、単独で存在することも可能である。たとえば、サージカルセンター、として、(1)の機能のみを有する施設を設置することも可能である。しかし、入院設備など、他の機能との共有が可能なので、上記をまとめて、病院として、入院部門を設置すればよい。
外来は、24時間対応で、上記の機能の受け入れ窓口として機能するだけでよく、継続通院機能は、全く不要である。
手前勝手な病診連携構想
外来通院はすべて、診療所で行い、病院機能を使用する必要があるときだけ、患者は病院に行くようにすればよい。その変わり、診療所の機能充実、とりわけ、医師の専門性の強化が不可欠となってくる。現在のように、病院が忙しいからとか、教授になれなかったからとか、お金を儲けたいとかといった不純な理由で、診療所を開設してもうまくいくはずがない。実際、お金はほとんどもうからないのだ。やってみてわかった。まず、赤字である。大切なことは、正しい思いを持ち続けることができるかどうか、それが、よい診療所経営の基本である。