分子標的薬剤として、期待されているビバシズマブ、ソラフェニブ、スニチニブ、モテサニブと、乳癌でも検討がすすんでいるが、いずれも旗色がわるい、という発表が相次いだ。ビバシズマブは血管新生促進物質であるVGEFに対するモノクローナル抗体である。日本では大腸癌と肺癌で承認されており次は乳癌だぞ!、と期待だけはやけに大きい。理屈通りの効果が現れて感劇を覚える人は多い。乳癌でも承認が激しく待たれるという雰囲気を虫害山蛾あたりは醸し出しているが続々発表されるデータにスティーブンボーゲルでなくても首をかしげてしまう。
AVADO試験はイギリスのマイルズが発表した。転移性乳癌で初回治療として、ドセタキセル単独 vs. ドセタキセル+アバスチン体重当たり7.5mg vs. ドセタキセル+アバスチン体重当たり15mg の盲検化ランダム化比較試験。この結果、生存期間に全く差がなかったという結果であった。大山鳴動してネズミ一匹、という感じでちょっとがっかりだ。
RIBBON-2試験はアメリカのブラフスキーが発表した。転移性乳癌の2次初回治療として、抗がん剤単独 vs. 抗がん剤+アバスチン体重当たり5mg/週 のランダム化比較試験。抗がん剤は、タキサン(パクリタキセル週1回または3週1回、ドセタキセル、アブラキサンなど)または、ゲムシタビン、カペシタビン、ナベルビンなどOK。この結果、生存期間に全く差がなかったという結果であった。これもがっかり系結果だ。アバスチンは、この2本のほか、E2100、RIBBON-1試験があるが、いずれも生存期間に差はない、という結果である。いずれの試験も、効果持続期間には有意差あり、ということだが、薬剤としてどのような意味があるのか、ニューヨークでオンコロジークリニックを開業するスティーブンボーゲル先生も、スローンのクリフハディス先生も、生存期間延長効果のない薬剤は、意味がない、ぐらいのことを言う。私も、それに近い意見である。しかもアバスチンはべらぼうに高い。50kgの人だと、250mgを2週間に1回使用、1バイアル100mgなので、3バイアルを月に2回使用することになる。そうすると1バイアル5万円なので、1か月で30万円だ。それで生存期間延長効果がない、ということになると、どうかなあ・・。1バイアル1万円ぐらいならよいかなあ・・・。高いなあ・・・。という感じ。(以下次号)