先輩からの名言


父の背中や高木君の言葉のブログには結構反響があった。医療センターのオープンシステムを初めて知ったとか、地域医療の在り方に関する卓見など、また、どのように勉強すれば腫瘍内科を習得できるのでしょうか、という問いかけもあった。学生が来たり研修医と接したりしていると自分はどういうふうに現在の行動の規範を形作ったのだろうかと、考えてみる機会が多々ある。つまり指導に苦慮しているということ。最初に研修病院に出たときにお世話になったK先生は、私たちが病棟業務をしているとやってきて「遅くまで大変だね、ラーメンでも食べに行くかい」と、近くの屋台に連れて行ってくれた。それで、説教をするわけではなく「先生たちはいいよなー、これで1年もたてば、はい、さようなら、って、次の病院に移れるからな、頑張ってくれよな。でも、おれたちは、絶対に患者から逃げられないし、患者が診てほしいって言ってきたら絶対に断れないんだよ。」と、愚痴るような、はげますような話で、一体何を言っているのだろうか、と当時は感じた。しかし、K先生は患者を他の病院に紹介した時は地下鉄で同行し、また、夜中でも休日でも、呼ばれれば絶対に病院に出てきた。医師としての規範を自らの行動で示してくれたように思う。国立がんセンターのレジデントの時代、先輩からたくさんの事を学んだ。市川平三郎先生が夜の10時ごろにお帰りになるときに、玄関の自販機で缶コーヒーを買っていた私に後ろから「遅くまでがんばるねー、若いうちは寝食を忘れて頑張ることも大切だね、じゃ、お先に」と声をかけてくれたことがあった。阿部薫先生は「アルバイトをしていいとかいけないとか、そういうことを私は言うつもりはありません。君たちのような若者が、青春の貴重な時間を切り売りするようなことはしてほしくない、本当にもったいないということです。」と、オリエンテーションのときにお話しになった。このような先輩の教えは、いまでも鼓膜のあたりでこだまして、いつの間にか、骨身にしみついているような気がする。時代はそんなに変わったとは思わないが、どうしたら楽ができるか、どうしたらお金が稼げるか、どうしたら楽しい生活が送れるか、というのが行動の規範になっている諸君が多いような気がしてならない。われわれが先輩からの名言を後輩に伝えることができないことが問題なのだろうか、と、ふと弱気にもなってしまう。

投稿者: 渡辺 亨

腫瘍内科医の第一人者と言われて久しい。一番いいがん治療を多くの人に届けるにはどうしたらいいのか。郷里浜松を拠点に、ひとり言なのか、ぼやきなのか、読んでますよと言われると肩に力が入るのでああそうですか、程度のごあいさつを。

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