乳癌初期治療について御案内致します。腋窩リンパ節転移の有無・個数、腫瘍径などの「解剖学的拡がり」に基づいてリスクを評価するというのが20世紀のルーチンでした。言ってみれば、扉の入り口に「n=0」とか、「n=1-3」とか書いてあってそこからはいるという感じでした。ところが、2011年のザンクトガレンではっきりと方向が変わりました。入口には「luminal A」、「Luminal B」、「HER2 rich」、「Basal like」と書いてありますから、該当する病型をまずお選びください。「Luminal B」の入り口を入ると、なかに「HER2陽性」と「HER2陰性」と書いてありますので、該当する方にお進みください。Luminal B1 LuminalB2とでもいうのでしょうか? まるでビタミンみたいですね。扉をあけて中に入ると、中にどんな治療をすればよいかを説明する係のものがおりますので御相談ください。LuminalAを入ると、選択肢は内分泌療法しかありません。ですから、いくら腫瘍径が大きい、といってもER100% PgR100% HER2陰性、grade1 Ki67 5%のような乳癌に間違っても術前化学療法などはやらないようにお気をつけください。術前ホルモン療法として、閉経後では最大効果が得られるまでAIなりTAMなりを継続するという方法が完全に確立されております。また、閉経前でもLHRH-A、AIという選択肢もありますのでご検討ください。このように、今回のザンクトガレンでは、完全に、病型分類から入ると言う形になりました。腋窩リンパ節転移のありなしとか、個数とかは、腋窩郭清が大幅に削減されていく状況と相まって、あまり重要な意味をなさなくなり、より「生物学的」なアプローチが鮮明になってきたという感じです。日本のトレンドとしては、しでのこの流れを先取りしていたので大きな変更とはならない、と感じる先生がたも多いと思いますが、中には、まだ20世紀的な「解剖学的拡がりが予後を決定する」という考え方に固着している方もいると思いますから、そういう方は自分で自分の脳を洗ってください。
不勉強ですみません。一つ教えて下さい。
luminalAとBは何を指標に分けるのですか?
Bなら全てHER2陽性だと思っていました。
渡辺先生
3月26日は熊本での特別講演ありがとうございました。
大変勉強になり、また大変な刺激になりました。今も先生の講演のノートを見ながらいろいろな事(「!」とか「?」とか)が頭の中をを駆け巡っています。
また私の発表に質問いただいて大変光栄でした。こちらもさらに良いものにするにはどうしたものかと思い巡らせています。
さらには、その後の席にご一緒させていただけたのも大変嬉しい出来事でした。大変失礼かとは思いましたが思い切って私の「?」を質問することもできました(ガイジンはコワイですが、面と向かって先生質問するのはもっとコワかったです。会場で質問するのは割と平気なんですが)。快くお答えいただき感激でした。
先生はまた忙しい日々が続くのでしょうが、ぜひ御自愛下さい。また先生の講演を聞く事ができる機会を楽しみにしております。
渡辺先生
本年3月まで聖マリアンナ医科大学乳腺・内分泌外科に在籍しておりました。4月からマリアンナを退職して、大船中央病院乳腺センターに引っ越しいたしました。
大昔の癌治で、先生に座長をしていただいた事が今でも良い思い出です。自分で考えて結論を出すことが大切であると、当時若かった私は、先生に教えていただきました。
前置きが長くなりました。質問です。今回のSt.GallenのvotingでのLuminalBに関する質問 ” <> Use also ER+ PgR- and/or …………HER2-positive?”は、LuminalBの定義にER+/PgR-/HER2-なんかも入れちゃうの?というような意味合いでしょうか? LuminalBの定義をどこまで広げるのか、混乱がすでに生じているということでしょうか?その結果、yesと他が半々の結果になってしまったと解釈してよろしいでしょうか?