後藤 剛先生へ


貴重なコメントをありがとうございました。よいコメントでしたので、お答えを皆さんにも読んでもらいたいと思います。
比較試験はER陽性症例を対象としてホルモン療法 対 ホルモン療法+化学療法 というランダム化比較試験が複数実施されました。これらの試験では化学療法の上乗せ効果があってもごくわずか、という結果が得られています。有意差にはなっているけどその差はごくわずか、ということです。これらの試験のいくつかを対象に、Oncotype DXの性能評価が行われたのは御存知でしょう。その結果は、Recurrence Scoreが低い症例では化学療法の上乗せ効果はない、Recurrence Scoreが高い症例でのみ化学療法の上乗せ効果があるという結果でした。また、RSの低い症例では、Luminal Aの特性も有していると言うことも明らかになっています。一方、Dan BerryのJAMAの論文、Dan HayesのNEJMの論文でも、サブセット解析でやはりER陽性、HER2陰性といったLuminal Aの特性を有する症例群では、強いケモ、長いケモ、複雑なケモの有用性は認められていません。頭を使ってこれらの情報を包括的に判断するとLuminal Aには、化学療法は不要という、好ましい結論がコンセンサスとして導きだされたわけです。なにも、当惑するはなしではなく、もし、御不満なら、北海道地区ででも、Luminal Aを対象としたProspective randomised trialで、Chemo vs. Endocrineを検討されたらどうでしょうか?

投稿者: 渡辺 亨

腫瘍内科医の第一人者と言われて久しい。一番いいがん治療を多くの人に届けるにはどうしたらいいのか。郷里浜松を拠点に、ひとり言なのか、ぼやきなのか、読んでますよと言われると肩に力が入るのでああそうですか、程度のごあいさつを。

“後藤 剛先生へ” への 1 件のフィードバック

  1. 渡辺先生
    名指しでお返事をいただき光栄です。個人的には、高価なOncotypeDXを用いなくても免疫染色だけで治療方針を決められるのであれば患者さんにとってもメリットがあると思っていますが、批判的に吟味するのがEBMの基本と習ったので質問させていただきました。
    OncotypeDXのLow RSがLuminal Aとイコールであれば話は簡単だと思ったことはあります。残念ながら自身で経験した症例がないので検索できる文献でしかわからないのですが、Cheng Fan先生のNEJMの論文では、Intrinsic SubtypeがLuminal Aの121症例のRSについて、Low 68例、Intermediate 13例、High 40例と述べられています。RSの低い症例はLuminal Aの特性を有しているかもしれませんが、Luminal Aが全てLow RSとは言えずHigh RSも含まれるとすれば、逆にchemoで利益のある症例があるということにならないでしょうか?
    加えて、OncotypeDXの対象症例は現状ではER+でもn0あるいは閉経後でn=1-3のみです。これは年齢や「解剖学的拡がり」でエビデンスが限られているからだと理解しています。これを根拠にLuminal A全てを対象に内分泌療法のみで良いというのは飛躍があるように思われます。
    また、先生が挙げられた2つの論文が、もしCALBGに基づいた論文のことでしたら、あくまでもPaclitaxelの上乗せ効果あるいはdose intensityに関する検討であって、内分泌単独で良い根拠にはならないと思うのですが、違う論文でしょうか?
    長文で申し訳ありませんが、ぜひまたお返事をいただけると幸いです。

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