キャンサーコンビニと薬剤師の役割


21世紀を迎えすでに10年が経過した。がん治療の主役は「外科手術」から細胞毒性抗がん剤、分子標的薬剤などによる「薬物療法」へと交代しつつある。また、がん医療も「入院医療」から「外来・在宅医療」へと急速に移行している。また、二人に一人ががんに罹患し、三人に一人の死因ががんであるという現実を冷静に考えてみると、薬剤師はこの時代の地殻変動を肌で感じ、いつまでも20世紀型の医療に拘泥していてはならない。

① 外来化学療法がデフォルトスタンダード
外来化学療法加算は2002年に新設され、2004年には診療所での加算も可能となった。日常生活、社会生活を犠牲にしないで安全に実施できるため、初回治療からの外来実施が標準である。使用薬剤も細胞毒性抗がん剤に加え分子標的薬剤が広く用いられるようになってきた。そのため、薬剤師による情報提供も、初期治療と転移・再発後治療を本質的に区別し、治療目標を正しく認識しなければならない。

② 病院医療から診療所医療への移行
外来治療の普及に並行し入院医療の必要性は低下し、四桁の病床数を誇ってきたメガホスピタルもその存在意義に疑問が投げかけられている。周術期医療や救急医療を除いては入院の必然性がほとんどないがん医療において、今後のがん医療は診療所へと、その実践の場が移行していくことは確実である。患者の生活圏の中に位置する「キャンサーコンビニ」あるいは「街角がん診療」というコンセプトで表現されるような高機能がん診療所の普及が求められている。

② 診療所薬剤師の必要性
薬剤師の診療活動の場として、かつては病院または診療所があった。しかし、調剤薬局制度の強引な導入・普及や、診療所をかかりつけ医機能に特化させた結果、診療所は弱体化した。その結果、診療所から薬剤師の姿が消えて久しく、いまや、薬剤師の診療活躍の場は、超多忙な病院薬剤師か、夫婦そろって子供の運動会に参加できる調剤薬局薬剤師か、二極化したいずれかの選択しかできない状況となっているのではないだろうか。しかし、高機能がん診療所の普及とともに、調剤能力、管理能力、情報提供能力、情勢分析能力、協調調和能力、語学力などを備えた診療所薬剤師の育成が求められるようになるだろう。

③ がんを取り巻く医療と介護の融合
「抗がん剤治療中の患者にモルヒネを点滴することは是か非か」、かつてこんな馬鹿げた議論があった。がん治療と症状緩和は不可分の関係にある。高機能がん診療所で抗がん剤治療をうけた再発がん患者は、やがて、症状緩和医療が主体となり、さらには終末期医療へと以降していく。がん医療からがん介護へは、当然のことながら連続的に移行するものであって、ここまでが医療、ここからが介護という不連続ギアチェンジはないことが望ましい。抗がん剤などを用いた抗腫瘍治療、オピオイドなどを用いた緩和治療、そして医療、介護、薬剤、医療機材、療養機材を効率的に支援する在宅療養まで、がん患者の人生を連続的に、切れ目なく支援し、誰でも最後まで安心して生活できるがん医療体制を整えることが、私たち医療者の果たすべき役回りなのだ。

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投稿者: 渡辺 亨

腫瘍内科医の第一人者と言われて久しい。一番いいがん治療を多くの人に届けるにはどうしたらいいのか。郷里浜松を拠点に、ひとり言なのか、ぼやきなのか、読んでますよと言われると肩に力が入るのでああそうですか、程度のごあいさつを。

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