ASCO 3日目


ASCOの3日目の月曜日には、乳癌の口演があり、今日一日を乗り越えれば日本に帰れる、と多少、ホームシック気味であるが、元気を振り絞って今日の演題をレビューしよう。最初の演題は、NCIカナダからの放射線治療に関する発表である。今回は、あちこちの領域でNCIカナダからの発表がやたらと目につく。NCC JAPANは一体どうなっているのか?
さて、この試験では、腋窩リンパ節転移1-3個陽性、または腋窩リンパ節転移陽性ハイリスク患者、約2000人を対象に、乳房温存術後(A)乳房照射単独と、(B) 乳房照射+領域リンパ節(内胸リンパ節、鎖骨上下リンパ節)照射を比較した。その結果、生存期間ではBが良好な傾向、無再発生存期間, 局所領域無再発生存期間、遠隔臓器無再発生存期間すべて、Bが有意に良好であった。しかし、肺炎、皮膚障害、リンパ浮腫、がBに高率にみられた。今後は、リンパ節転移陽性なら、陰性でもハイリスクなら、乳房のみならず、領域リンパ節へも照射が必要であるという結果で、Practice changing、つまり、日常診療のあり方を変えるほどのインパクトのある結果である。

アバスチンの術前治療に関する演題がふたつ。一つはNSABPB-40、

化学療法は、①ドセタキセル(100mg/m2)4サイクル→AC(60/600/m2)を対照群として、②対照群のドセタキセルの部分にカペシタビンを加えるアーム、③対照群のドセタキセルの部分にゲムシタビンをを加えるアームの三通り。そしていずれの群も、半分の症例はアバスチンを3週間に1回(10mg/kg)でくわえるという、「3 x 2」のファクトリアルデザインのランダム化比較試験である。病理学的完全効果(pCR)割合を比較した。pCRの定義はNSABPの「非浸潤部に癌は残っていても浸潤部に癌がなければOK」というものである。1206症例が登録された。化学療法の比較で、①対照群 61.5%、②カペシタビンを加えた群58.3%、③ゲムシタビンを加えた群60.4%と全く差なし、温存率も差がなし。ビバシズマブを加えた場合、ビバシズマブなしが28.4%のpCRに対して35.4%(p=0.027)と有意に良好でああった。これを病型別みるとホルモン受容体陽性では、ビバシズマブなしが15.2%のpCRに対して23.3%(p=0.008)、トリプルネガティブでは、ビバシズマブなしが47.3%のpCRに対して51.9%(有意差なし)であった。本来、ビバシズマブの効果が期待されたトリネガでは、全く効果がなかったと言う結果である。まとめるとカペシタビン、ゲムシタビン、ビバシズマブの追加効果は、極めて乏しいということになる。

もうひとつのネオアジュバントの演題は、ドイツからのGEPAR QUINTである。これは、EC4サイクル→ドセタキセル4サイクルに、ビバシズマブあり/なしのランダム化比較試験である。pCRの定義は「浸潤部も非浸潤部にも癌の遺残なし」と言う厳しい基準である。全体での検討では、pCR割合は、ビバシズマブなしで15%、ビバシズマブありで17.5%で全く差はなかったが、トリプルネガティブ症例でのpCR率は、ビバシズマブなしで27.8%、ビバシズマブありが36.4%(p=0.021)で有意差あり、と言う結果である。つまり、NSABPでは、ER陽性症例でビバシズマブの追加効果があり、トリネガではなかったのに、ドイツのGeparQuintoでは、トリネガで差があり、ER陽性では差がない、全体症例では、ドイツでは差がないのに、アメリカでは差があった、というまたもや悩ましい結果である。あ~、これでは、虫害山蛾の群れは益々眠れぬ日々が続くなぁ・・・(;一_一)。

つづく PARP阻害剤のはなし、と全体の感想。

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投稿者: 渡辺 亨

腫瘍内科医の第一人者と言われて久しい。一番いいがん治療を多くの人に届けるにはどうしたらいいのか。郷里浜松を拠点に、ひとり言なのか、ぼやきなのか、読んでますよと言われると肩に力が入るのでああそうですか、程度のごあいさつを。

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