街かどがん診療を始めて6年、高機能診療所の意義、診療所薬剤師の重要性などが見えてきた。また、外来化学療法を受けていた再発がん患者を、引き続き「シームレス(切れ目なし、つなぎ目なし)に在宅での療養につながるためには、介護、介護保険などについても理解を深めなくてはいけないことを痛感している。同時に、介護に携わる人たちが、がんのことをあまりに知らなさすぎる、ということもわかった。つまり、がんをめぐる医療と介護の連携、ということが、全然できていないということ。我々も、介護福祉士とか、介護支援専門員とか、あるいは、介護に携わる看護師の役回りとか、あまりよくわかっていないのである。それなので、「がんを取り巻く医療と介護の相互理解のために、がんになっても安心して暮らせるためのまちづくりのためのなかまづくり」と題して、7月2日にがん情報局主催の第1回の勉強会を開催した。最初に私から「がんを理解しよう」について講演した(講演ファイルはがん情報局WEB)に掲載してあります。後半は、居宅介護支援事業所(といっても実態がまだよくわからないのだが)の主任介護支援専門員(といっても実態がまだよくわからないのだが)で主任ケアマネージャー(介護支援専門員とケアマネージャーとは同じ肩書なのか、英語で言っているだけなのか、それもよくわからないのだが)の佐藤文恵さんが、在宅看取りの事例を紹介し、介護の実態、問題点をわかりやすく提示してくれた。引き続き、約50名の参加者に5-6名づつわかれてもらって、グループ討議で、何がいったい問題なのか、とか、どうなれば、もっとやりやすくなるのか、など、ブレインストーミング的な話し合いが行われた。私も一グループに張り付いて、議論に参加した。そこで分かったこと、例えば、病院をそろそろ退院し、在宅で過ごしたいという患者がいると、病院で開催される退院前カンファレンスに、ケアマネージャーらが出向いて行くが、その部分の活動は、全く報酬にならず、全くのサービス、ボランティアであるということ、今までの介護が「高齢者・認知症・ADLのゆっくりとした低下」という枠組み、時間軸のなかで構築されたいたが、がん患者の場合、先週と今週とは全く違う、昨日と今日でも調子が全然、異なる、ということもあり、スピードのある対応が求められること、介護福祉士とか、介護支援専門員といった職種は、医療職としての背景を持っていないので、退院前カンファレンスで討議されることが、おおかた、ちんぷんかんぷんであるということ、など。課題は多いが、解決の方向性は見えてきたので収穫は大きかった。
また、関連して別の話しだけど、6月のはじめに、在宅療養を望む患者さんの訪問看護をお願いしたところ、在宅診療医師の指示で2000ml/日の輸液が行われた。数日後に呼吸困難が増強した。お願いした以上、文句は言えないが、ホメオスターシスの低下した患者の補液は500-800ml/日に絞らないと、アルブミン低下→膠質浸透圧低下→肺水腫という展開は容易に想像できる。2週間前に講演した緩和医療薬学会でも、既にガイドラインに基づいた補液管理が大切であることがしきりと強調されていた。不適切補液による状態悪化は、レジデントの頃に「水のやり過ぎは、根ぐされに注意」というわかりやすい表現で、阿部薫先生から教えてもらったことだ。内分泌学の大家である阿部薫先生は、30年前から、終末期患者の適正補液について口やかましく言っていた。そんなこともあり、緩和医療薬学会での帰り道、品川駅から阿部先生に電話して「先生が、昔、うるさく言っていた終末期のがん患者の補液の話、今日参加した学会で、もう、完璧なガイドラインが出来ていましたよ。先生の言っていたとおりですね。」と申し上げたところ「そうか、俺、そんなこと言ったか、もうわすれたよ、亨ちゃんに任せてあるんだから。それよりもなあ、お前、読売新聞読んだか、垣○の馬鹿が、また、とんでもないこと言ってるぞ。あいつは、全部、てめえがやったようなつもりになってんだから、ほんとに、あいかわらず、あいつは馬鹿だな。」と、相変わらず、熱くメラメラと燃える上司のエネルギーにあらためて触発された品川駅でした。
渡辺先生
野村です。久しぶりのコメントです。介護の話になったら止まりませんのでここでは控えますが・・・これからもっと必要になる知識だと思います。医療従事者は介護を、介護福祉従事者は医療を勉強する機会を作りたいです!
野村さんからの介護の話しを聞きたいと思います。お願いします。止まらなくても構いません。
渡辺先生 承知いたしました。私の知る限りの世界にとどまりますが・・・まとめておきます!