戒律主義の復活


地域講演会には、○○懇談会、○○疾患研究会、○○セミナー・・なんちゃらのタイトルがついていて、私たちはよく、その「to特別講演」というところに呼ばれる。その講演の前に、製品説明会という10分程度の前振りがあり、そこは主催している製薬企業の学術担当者がスライド10枚ぐらいを使って説明するのだが、通常、だれも聞いていない、質問も出ないし、拍手もない。むしろ、参加予定者が集まるまでの時間稼ぎのような感じだ。ところが、今後、われわれも講演では、そのような製品説明以外の話はしてはいけない、ということになるかもしれない。そもそも、地域講演会を企画する立場の、その地域ごとの先生方(使い慣れた表現でいういうと地方の豪族)からしてみると、特別講演では、最新の情報とか、学会の速報ネタとか、わりと奇抜な話とか、洞察深き講演とかを期待しているのであって、スポンサー企業の薬剤の保険適応となっている使い方の話を聞きたいと思っているひとは少なかろう。もっとも、我が国で保険適応になっている用法、用量での、卓越した治療経験とか、その根拠となった有名な臨床試験の話、というのも、味付けをうまくすれば聞いてみたい講演となるだろう。最近、例の製薬協の取り決めがまた、ばからしくなったようで、昨日は、その説明にわざわざ東京の本社から担当者が来た。「月末にお願いしている弊社主催の講演会で承認されている用法、用量以外の内容の話しはしないでください。」という内容である。「わかりました。御社の製品の話は一切するつもりはありません。別社の製品の最新の話題ならば問題ありませんね。別虎銭火の閉経前乳癌での最新の話題などをしようと思っていますが、どうでしょう?」と話すと担当者は、「それならば問題ありませんが、何かさびしいものがありますね。」との反応。あなたはさびしいかもしれないが、講演を聞きたい人はうれしいのではないでしょうか。世の中は、くだらないルールが益々、横行しはびこっておいる。この件もそうだし、COIの話も拡大解釈する馬鹿もいるし、これではまるで、ユダヤの戒律主義である。安息日に仕事をしたキリストイエスは、きっと同じような心境だったのではないだろうか。

投稿者: 渡辺 亨

腫瘍内科医の第一人者と言われて久しい。一番いいがん治療を多くの人に届けるにはどうしたらいいのか。郷里浜松を拠点に、ひとり言なのか、ぼやきなのか、読んでますよと言われると肩に力が入るのでああそうですか、程度のごあいさつを。

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