転移は手術するべきか? (1)


夏休みということもあって、ややまったりとした雰囲気で時間がながれてるようないないような。以下の文章は、朝日新聞静岡版連載記事転用でご容赦。

がんは最初に発生した部位(これを原発病巣と呼ぶ)から、がん細胞が血液の流れに乗り他の臓器に移り、そこで増殖します。これを転移、転移した場所を転位病巣と呼びます。転移は、肺、肝臓、骨、脳などの臓器によく起こります。転移病巣を手術する意味があるかについて、腫瘍内科医と外科医との間でしばしば論争になります。外科医は技術的に手術できれば手術する、腫瘍内科医は、手術すれば、治癒するのか、寿命が延びるのか、を考えます。
肺転移を例に考えてみましょう。転移は、原発病巣に対する治療後、定期的な検査として行われる胸部レントゲン写真やCT検査で診断されることが一般的です。転移は、通常、1-2cmのまるい影として映ります。その場合の治療は、同じ肺転移と言っても、乳がんからの肺転移と大腸がんからの肺転移とでは、多少意味が異なります。乳がんは、ホルモン剤、抗がん剤、抗体療法といった薬物療法がよく効くので、転移であることが明らかな場合には、肺転移病巣を手術する意味は全くないと言っていいでしょう。薬物療法で長期間にわたりがんが消えてしまうこともよくありますし、稀にがんが消えたまま治療終了後もぶり返してこない、つまり治癒したと思われる場合もあります。「転移であることが明らかである」とは、影が二つ以上ある場合とか、乳がんの腫瘍マーカーが血液検査で高い値を示している場合などです。肺の影が一個だけの場合には原発肺がんの可能性もあるので、手術で白黒つけなくてはいけません。
では、大腸がんからの肺転移はどうでしょうか。学術論文やガイドラインを読むと、「今までの治療経験によると、大腸がん手術から肺転移診断までの期間が長い患者、あるいは、肺転移が少なく技術的に切除可能な患者では、切除後の生存期間が明らかに長いので、切除する方がいい」と書いてあります。これは果たして本当でしょうか? 次回、この問題を掘り下げて考えてみたいと思います。

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投稿者: 渡辺 亨

腫瘍内科医の第一人者と言われて久しい。一番いいがん治療を多くの人に届けるにはどうしたらいいのか。郷里浜松を拠点に、ひとり言なのか、ぼやきなのか、読んでますよと言われると肩に力が入るのでああそうですか、程度のごあいさつを。

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