前回とりあげた患者タイプ分類は、医師が患者とうまくコミュニケーションをとるために提案されたものですが、父権型、すなわち「だまって私の治療を受けなさい」というタイプは時代遅れ、解釈型、つまり、自分では問題を具体化できず医師に導かれ答えを探すタイプは優柔不断、自分で情報を集め、自分で治療を選択する情報型が近代的である、と勘違いする医師が結構多いように感じます。
ある日、ご主人と一緒にセカンドオピニオンを求めて、当院を受診した肺がんのYさん、担当医から次のような治療の説明があったそうです。「ゲフィチニブという飲み薬が効く可能性がありますが、間質性肺炎という、一気に呼吸が苦しくなって死亡するような副作用も出る恐れもあります。この薬を飲むか、飲まないかを次の外来までに決めてきてください」。どんな薬でも、「効果」と「副作用」のバランスを考えて、治療を受けるか、受けないかを検討する必要があります。Yさんが情報型であれば、自分で調べてさらに主治医にわからないことを質問し決定することができたかもしれませんが、どちらかというと解釈型、自分だけでは結論が出せず、医師に導かれて答えを探すタイプです。次の外来までの一ヶ月間、ご主人と一緒に図書館に行ったりインターネットで調べたりしましたが決められません。一方で、咳はだんだん強くなるし、病気が進んでしまう不安も増してきます。たまたま、インターネットで目に留まった当院にお見えになったのでした。副作用の頻度、効果の可能性などを説明しながら、「私は治療をお受けになることをお勧めします。」とお話ししましたところ、安堵の表情でお帰りになりました。タイプを見誤ると、かえって患者さんを苦しめることにもなりかねないということも言えますが、むしろ、誰にでも、情報型、解釈型、審議型、父権型の要素が、少しづつ混在していると考える方が、実情に即しているように最近では感じています。