逆境にまけない力


先週金曜日は、新潟の牧野春彦先生に、「逆境に負けない乳がん診療」の話をしてもらいました。牧野先生とはかれこれ20年ぐらいの付き合いになります。JCOG班会議で、彼は新潟がんセンターから、私は国立がんセンターから参加し、私は事務局という立場で全国各地の先生方に、第三相試験推進のため、時には「失礼な」ことも言いながらJCOGをまとめよう、活性化しよう、とさまざまな工夫をしていました。牧野先生がJCOGの班会議に参加し始めたのは、ちょうどそんなころで、若いのに随分と激しいことをいうのがいるな、と思ったようです。その後、私は残された生命力をNSASグループ旗揚げに費やすため、JCOG乳がんグループから離れ、国立がんセンターも退職し個人ブランドでの活動と勝負に舵を切りました。牧野先生も、出る釘は打たれる、ということわざ通り、花の新潟がんセンターから、辺境の地、新潟県立坂町病院へと飛ばされてしましました。牧野先生のすごいところは、そこからです。与えられた環境で最善を尽くす、ということができること、そして、最善とは何かを冷静に分析できること、そして、それに即したアクションプログラムを具体的に計画できること、そして、計画に基づき、周りの人々を引っ張りこんで実現させてしまうことです。坂町病院に移って間もなく、牧野先生は院内の体制を整え、NSASBC02トライアルに多くの症例を登録してくれました。そのおかげもあって、NSASBC02はよい結果(The efficacy of taxanes seems to be schedule-dependent. Docetaxel is suitable for tri-weekly schedule but paclitaxel is more efficacious when administered in weekly dose-dense schedule. Our observations in this study are in a vegood agreement with those in a report by Sparano et. al 1. (2)Eight cycles of Docetaxel at 75 mg/m2 is an alternative choice of regimen in patients who are intolerance for, or reluctance to treatment with anthracyclines because of concern of cardiac malfunction or fear of nausea and vomiting. 1. Sparano JA, Wang M, Martino S, et al. Weekly Paclitaxel in the Adjuvant Treatment of Breast Cancer. N Engl J Med 2008;358:1663-71.)が得られ、来月のサンアントニオ乳がんシンポジウムでは、ポスターディスカッションで発表してまいります。

牧野先生のパッションの根源となるのは、好奇心であろうと思いますが、どのように育てば、内部からの情熱を絶やさず燃やすことができるのか、甘松医大の若手にもぜひ、伝授してほしいものです。彼は講演のなかで、ガラス細工のようなK州がんセンターのY先生や、A県がんセンターのY先生から、関連病院に飛ばされて一般外科をやらねばならずどうしたらいいでしょうか、と相談され、ミッション、ヴィジョン、パッション、アクションが大事であること、与えられた環境で最善を尽くすことを説いたことに触れていました。なかなか印象的な講演でしたし、得難い人材で、懇親会では口癖のWant you(うぉんちゅー)を連発しておりました。翌日は、浜松オンコロジーセンター見学に来られ、当院で開発した外来化学療法オーダリングデータベース「All About Chemo!!」にいたく関心されていました。昼は、きぼりで浜松餃子を堪能されていきました。

投稿者: 渡辺 亨

腫瘍内科医の第一人者と言われて久しい。一番いいがん治療を多くの人に届けるにはどうしたらいいのか。郷里浜松を拠点に、ひとり言なのか、ぼやきなのか、読んでますよと言われると肩に力が入るのでああそうですか、程度のごあいさつを。

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