臨床試験はしっかりした計画の上に、遂行するチームをがっちりと構築し、被験者となる患者の協力を得るために「インフォームドコンセント」すなわち、「理解できるように丁寧に説明した上での同意」を取り進めて行かなければなりません。試験の計画、一切の取り決めや手順などは、試験計画書(プロトコール)にまとめます。CMFとテガフール・ウラシル配合薬のランダム化比較試験も1年半に及ぶ周到な準備期間をへて100ページを超えるプロトコールを作成、いよいよ1996年10月、NSASBC-01(エヌサスビーシーゼロワン)試験として症例登録が始まりました。医療の世界では長年の慣例として、診療検討会や、研究、教育の対象として患者の事を症例という表現を使います。NSASBC-01試験では、欧米で標準治療として乳がん手術後の再発予防に使用されていたCMF(シーエムエフ)という3種類の抗がん剤を組み合わせる治療方法と、日本で開発され広く使用されていた飲み薬であるテガフール・ウラシル配合薬との再発を抑える力を比べることを主目的として行われました。