その一つは、試験を担当する全国50の病院の医師に、説明する技術を広めるためのロールプレイです。ウィキペディアによれば「ロールプレイとは役割演技(やくわりえんぎ)とも訳され、現実に起こる場面を想定して、複数の人がそれぞれ役を演じ、疑似体験を通じて、ある事柄が実際に起こったときに適切に対応できるようにする学習方法の一つ」と説明されています。試験の実行委員会のメンバーである医師、看護師が、臨床試験の目的、方法などを説明する医師役、説明を聞く患者役、その隣にすわる患者の夫役、そして、患者、家族を支える看護師役の4名と、全体の司会、解説をする私の計5人からなる一座で、週末に日本全国を寸劇を仕立てて行脚したのです。患者役を演ずる看護師の「私はいちばんいい治療を受けたいのに、それが先生もわからないなんて、そんなおかしな話ってないでしょう」と、涙ながらに訴える迫真の演技に、説明する医師役の医師は、つい、演技であることを忘れてしまった場面などもあり、毎回の反省会の題材には事欠きませんでした。