見えてきた暗礁


来年の浜松での乳癌学会の準備を実行委員会では日夜、一生懸命進めています。学会のテーマ、「情報・知識・理解の共有」に沿って、主たる三会場でのメインプログラムの骨格案はほぼ決まりました。各会場では三日間、1会場につき7つのセッションを企画しました。数例をあげると、原発病巣の手術に関するセッション、術前薬物療法に関するセッション、脳転移に関するセッション、橋渡し研究推進に関するセッション、遺伝性乳癌に関するセッション、看護外来に関するセッション、検診体制に関するセッション・・・と、大変魅力的で、時代にマッチしたテーマと、最適の司会者、演者を候補としてあげて、これから交渉に入ります。

一般演題の募集も始まりました。すでに100を超える演題が寄せられています。優れた演題、これは!と思われる演題は、主たる三会場で1000人から2000人の聴衆の前で口頭発表となりますから、是非、良い演題を多数お送りください。ポスターディスカッションもがん治療学会で、強烈なインパクトを感じた、という感想が多数聞かれます。あんな感じで、レビューワーの先生方にも活躍して頂きたいと切望しています。

問題は、企業スポンサーによる、モーニング、ランチョン、サテライトセミナーの企画です。暗礁に乗り上げています。今回は、全体のテーマ「「情報・知識・理解の共有」」と、サブテーマ2の「みんなでつくろういい学会」に基づき、まず、実行委員会で、こんなセミナーで勉強したい、という観点から、一回表の攻撃で、実行委員会側で案をつくり、9月の初めに、企業説明会を開催し、いかがでしょうと投げかけました。それに対して10月の初め、一回裏の攻撃として各企業側から、うちは、この企画をやりましょう! うちは、ちょっと違うけどこんなのを考えました、どうでしょう! ぜひ、これをやらせてください! という積極的な対応を頂いたところもありますが、なしのつぶてのところもありました。そして、現在、二回表の攻撃として、各企業との個別面談を連日開催し、浜松まで足を運んでもらって、夜遅くまで実行委員会側からの、ここをどうにか、とか、これをこうすればもっとすばらしいのでは、とか、いろいろな提案と相談を、FACE TO FACEで進めています。いわば、個別交渉、復活折衝です。中には、P社のように素晴らしい協力を約束してくれたところもありますが、しぶい反応も多く、ため息まじりの冬の空という感じ。暗い海底に横たわる暗礁に小さなカヌーは行く手を阻まれています。苦しみながらも暗礁を交わしていますが、その実態は何かを探ると見えてきたのは・・・。

「私たち実行委員会は、Nという薬剤の使い方、術前治療での海外のデータとかにとても興味をもっているので是非、昨年のようにモーニングで企画できませんかねエ」、という投げかけに対し、薬剤Nは、来年にはジェネリックが出るので、開発したブランド企業K社は、「弊社としてはNについては、セミナーでは扱わない方針で・・・」、企画を持って帰っても、担当部署からはOKが出ないと思う、と言うのです。「それでは、中心静脈ポートの関連でM社と抱き合わせで安全な投与方法の推進ということではどうでしょうか?、御社50%、M社50%の負担ではいかがでしょうか?」というようなネゴシエーションを展開しています。  暗礁① ジェネリックがでるとだれも面倒をみない業界体質

あるいは、「業界規約で、適応のない術前治療について扱うわけにはいかなくて・・・」などなど、歯切れがわるい。そこで、いろいろな工夫を提案した結果、T社のように、若年性乳癌の企画、わが社にぴったりかも、それで行きましょう!!と、それまでどんよりしていた目が急に輝きだした、などは、二回の表裏の攻防にはとても盛り上がりを感じた瞬間でした。しかし、全般的には、そうは問屋が卸しません。

とりわけ、びっくりしたのが、次の事例です。最近、多くの薬剤で問題となっている副作用の予防、治療として、参加者がきっと聞きたいだろう話題について、当該企業に持ちかけたところ、驚くような反応が返ってきました。しっかり伏せ字にしてコピペ、以下のような感じです。

宮本先生

いつもお世話になっております。○★製薬の田中真紀子(仮名)です。乳癌学会ランチョンセミナー共催の件で、ご連絡が遅くなりまして、本当にすいませんでした。さて、今回お声がけいただきました日本乳がん学会の共催の件について、弊社内で関連部門と検討をさせていただきました。結論から申し上げますと、今回の共催は残念ながら見合わせさせて頂きたいとの結論です。昨今の製薬団体によるプロモーションコードの規制について、弊社に対しても通達が届いており、弊社の所属しております協会からも、処方箋を扱う医師が参加する学会への共催に関し、厳しい制限を受けているところでございます。
薬剤師さんや看護師さんの学会であれば規制は緩いのですが、明らかにお医者さんが中心の学会に関しましては、非常にご協力が困難な状況となっております。
折角、弊社のような会社にまでお声をかけて頂いたにもかかわらず、上記のような結果をお伝えすることになり、真に心苦しい状況でございますが、なにとぞご理解賜りますようお願い申し上げます。また今後とも、ご指導ご鞭撻賜りますようよろしくお願い申し上げます。渡辺亨先生にもよろしくお伝えいただければ幸いです。

暗礁② ユーザーのニーズを全く無視した業界のお手盛り規制 (とりわけおかしいのは医師はだめだけど看護師、薬剤師はOKというところ、なんのことだがわけわからず)

600もの戒律でがんじがらめのユダヤ教の世界では、もみあげを剃っただけでも罪びとになります。当時のユダヤ人はその戒律の厳しさから、のびのびとした暮らしができませんでした。そこに登場したイエスキリストは、「神を敬い、人々を愛すること」、この二つだけ守ることが大切、と説きました。ユダヤ化している製薬業界に救世主は現れるのでしょうか? 待ち望まれます。

 

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投稿者: 渡辺 亨

腫瘍内科医の第一人者と言われて久しい。一番いいがん治療を多くの人に届けるにはどうしたらいいのか。郷里浜松を拠点に、ひとり言なのか、ぼやきなのか、読んでますよと言われると肩に力が入るのでああそうですか、程度のごあいさつを。

“見えてきた暗礁” への 2 件のフィードバック

  1. 渡辺先生

    学会準備、お疲れ様です。そのような駆け引きがあったとは、びっくりですね。
    自分たちの思惑以外の話には乗ってこない、それでいてシャンシャン大会にはお金を出すというのは、健全な会社のやり方ではないですね。
    会社にはそれぞれの社員教育システムがあり、売上至上主義の会社、きちんとした教育をする会社など、つきあってみればよくわかります。

    先週末あった乳がん検診学会に参加してきましたが、玉城先生親子はがんばっておられました。非常に快適な会でした。浜松医科大学の小倉先生も来て、熱心に勉強しておられました。
    乳癌学会に行かされるものと思います。

    引き続き頑張って盛会になりますように、微力ながら応援しています。

    広島大学乳腺外科 角舎

    1. 角舎先生
      コメントありがとうございました。世の中が世知辛い方向、つまり、なんとなく利己主義でみみっちく、他人の評価ばかり気にする風潮が強まっているように感じます。製薬業界のいわゆる自主規制も、周りの目を気にして策定され、その結果、企業として持つべき本来の姿勢が失われているように感じます。外資系といわれる関西系の企業は、とりわけその傾向が強いように思います。その理由は、昔からの関西人気質に根ざすなにわ商法と、外資の無機的なビジネスモデルとをうまく融合できず、杓子定規な対応をとる以外、自己の存在を保つ術が見いだせないからだと感じます。そんな中で、ときどき出会うのが、侍のような心をもち、どうにかしてみます、社内で交渉してみます、と言って頑張ってくれる担当者にであうと、まだまだ捨てたもんでもないねエ、と感じることもあります。学会の準備も、そんな人との出会い、と考えれば、結構エンジョイできるものですね。

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