2013サンアントニオから学んだこと その2


1日目の午前中は、どれもいまいちの結果でした。分子標的薬剤の臨床試験結果を簡単にご紹介しましょう。

(1)キャベツはキャベツの巻

マルチナ・ピッカートによる「Neo-ALLTO」は、PFS、OSに差はなく、彼女いわく、この試験のプラマリーエンドポイントは、pCR(病理学的完全効果)であり、それを検証するための症例数、つまり検出力(パワー)を設定しているのでOSの差を検出できるほどのパワーはないのよ。OSの差は、来年のASCOで発表するALTO試験(術後治療での同様の三群比較)をお楽しみにね、ということでした。この試験の結果では、やっぱりキャベツはキャベツでしたが、手術後に1年間も[苦いキャベツ]を食べさせられ、こりゃかなわん、と、逃げ出したウサギもたくさんいたそうです。しかし、この試験ではとんかつをおいしくするというキャベツなりの意義はあるのですから、いかにしたら苦みをとるか、また、とんかつに盛るときにキャベツの適切な分量ということも考えないといけないでしょう。つまり、ラパチニブは1錠とか2錠でもいいかも、ということです。検証しましょう−。

(2)ミーハーねえちゃん登壇の巻

TRIO—US B07は、少数症例を対象として術前治療で抗がん剤「TC(DOCETAXEL + CARBOPLATIN)にハーセプチンを加えたもの(TCH)、タイケルブを加えたもの(TCTy)、ハーセプチンとタイケルブを両方加えたもの(TCHTy)の3群を比較した第二相試験でそれぞれ34例、36例、58例と少数。それでpCR(病理学的完全効果)を見た。結果はTCHで47%、TCTyで25%、TCHTyで51%。つまり、タイケルブはキャベツにもなっていないという結果。なぜneo-ALLTOと結果がそんなに異なったのか? 症例数が少なくて真実を見抜いていない? カルボプラチンにはキャベツは要らない? などの考察が成り立ちます。この発表は、内容、結果はこんなわけでしょぼいのですが前代未聞の現象がおきたのです。例によってDr.ヴォーゲルが質問したのですが、それまで、驚くほど冷静に淡々と発表していた演者のちょっと見にはかわゆいSara Hurvitsが突然、「やった、私にもヴォーゲルから質問がきた!! うれしー」ってな感じで壇上ではしゃいだのです。ああ、サンアントニオの壇上にもミーハーねーちゃんが登場してしまいました。

(3)超大物による巨大トライアル「大山鳴動して鼠も出ない」の巻

ハーセプチンの生みの親、デニス・スレーモンは足をけがしたとのことで電動カーで会場入りし松葉杖で登壇という痛々しいイントロでした。それで、結果も痛々しかったです。満を持して計画・実行されたBETHトライアルには、なんと3231症例が登録されました。この試験は、2cm以上のHER2陽性乳がん症例を(1)TCH(ドセタキセル+カルボプラチン+ハーセプチン)後ハーセプチン1年、(2)TCHにベバシズマブを加えたTCHB後ハーセプチンとベバシズマブ1年を比較、つまり乳がんでも、術後に使えばベバシズマブも効くんでないかい、という仮説のもとに検討、その結果、DFSもOSも全く全然、完璧に差なし。合併症は、ベバシズマブによる高血圧症がかなりの高頻度に、また、心筋虚血もベバシズマブで高率ということで、追加効果がないばかりかハームが全面にでる、という結果で、いいところは全くありませんでした。

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投稿者: 渡辺 亨

腫瘍内科医の第一人者と言われて久しい。一番いいがん治療を多くの人に届けるにはどうしたらいいのか。郷里浜松を拠点に、ひとり言なのか、ぼやきなのか、読んでますよと言われると肩に力が入るのでああそうですか、程度のごあいさつを。

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