情報の海で溺死しないために


がっかりしたという声が多数寄せられた乳癌学会もだいぶ昔の出来事という感じで、夏本番となりました。朝日新聞投稿ネタを今回も転用します。

最近は、セカンドオピニオンの考え方が随分広がって来ました。しかし、だれでも簡単にインターネットで最新の専門的情報が入手できるため、患者は医師よりも多くの情報を持っているということもまれではありません。先日、三十才代半ばの女性が、肺がん治療についてのセカンドオピニオンを求めて外来を受診されました。お母さん、伯母さん、お母さんの友人が付き添い、不安な顔で診察室に入ってきた患者は座るなり、びっしり書き込んだキティちゃんのノートを手に話し始めました。「大腸がん手術後6ヶ月の予定で開始した抗がん剤治療が終了する前に肝臓がんになったので手術をうけた。抗がん剤を変更して治療していたところ肺がんになったので、ネットで調べ、肺がんの手術で有名な病院にセカンドオピニオンを予約し二ヶ月待って受診したら、手術はできないといわれたとのこと。外科の主治医から言われて、同じ病院の消化器内科で話を聞いたが治療はないといわれた」という経過でした。そして「ネットで調べるとアレクチニブとかアフィチニブなど新しい薬があるのにどうしてつかえないのでしょうか」、さらにネットで調べた免疫療法、温熱療法などについての質問が延々と続きます。適当なところで話を遮り、患者があげた薬剤は確かに最新の肺がん治療薬だが、そもそも、肺がんではなく肺に転移した大腸がんなので、大腸がんとしての治療薬を選択することを説明したら、はじめて聞きました、と当惑ぎみでしたが納得した様子でした。また次々に転移が見つかり厳しい状況ということも伝えましたが、スチバーガ、ロンサーフなど新しい薬剤も使えることも説明し、患者も付き添いの方も安心してお帰りになりました。がん治療は日進月歩、我々専門医でさえ、情報をきちんと把握することは至難の技です。情報あふれるネット社会、情報の海でおぼれないように注意したいものです。

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投稿者: 渡辺 亨

腫瘍内科医の第一人者と言われて久しい。一番いいがん治療を多くの人に届けるにはどうしたらいいのか。郷里浜松を拠点に、ひとり言なのか、ぼやきなのか、読んでますよと言われると肩に力が入るのでああそうですか、程度のごあいさつを。

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