がん治療と仕事の両立


朝日新聞の「がんと就労 辞めずに済む職場に」と題する社説は、「治療と仕事が両立できるような企業社会にすることは、喫緊の課題と言ってよい。」と結んでいます。今や抗がん剤治療は通院で行なう時代、当院は街角がん診療をテーマに、外来点滴で抗がん剤治療のできる体制が整っており、毎日十五人前後の患者が治療を受け、仕事を続けている患者は多くいます。約三ヶ月間の術前抗がん剤治療を終え、手術を済ませた患者に話を聞いてみました。「まさか仕事を休まないで抗がん剤治療ができるとは思わなかった。」、「仕事に合わせて治療日程を調整してくれたので助かった。」などは、治療と仕事が両立できた方の感想です。吐き気やだるさが強く、途中から仕事が続けられなくなった学校の先生の場合、校長がすぐに代わりの先生を立て、無理しなくていいと言ってくれ、治療終了後は、完全に職場復帰した方もいます。社説が課題として主張するような、理解ある職場は確実に増えている事を実感します。一方で、治療と仕事の両立が理不尽に妨げられている場合もあります。がんと診断された後、治療の説明を聞く前に早々に退職してしまう患者がいます。知人から治療に専念しなくてはいけない、仕事どころではない、治療の副作用はとても辛い、などと言われての早まった決断です。そのため、最近では、がんを告知する時に、とにかく仕事は続けるようにと患者に釘を刺すようにしています。生命保険の中には、仕事ができないことにしないと保険が全くおりないという場合もあります。書式が最初から「労務不能の日数」を書くようにできており、発病前の仕事ができないようなら労務不能とするとなっていて、短時間勤務や軽作業なら就労可能、といった状態に合わせた柔軟な記載ができるようにはなっていないのです。こういった一つ一つの事例を検討し合理的に改めることで、「辞めずに済む職場」を実現することは容易だと私は思います。ただ、そうは言っても、できれば仕事をしないで給料だけもらいたい、というひともいます。傷病手当をもらうために、どうにか働けないことにしてほしいとか、生活保護をうけているひとが、働けないということにしてほしいと言ってくる事もあります。「だからさー、お願いだから、働けないって書いてよー、いいじゃあーないの」「だめよー、だめ、だめ!」

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投稿者: 渡辺 亨

腫瘍内科医の第一人者と言われて久しい。一番いいがん治療を多くの人に届けるにはどうしたらいいのか。郷里浜松を拠点に、ひとり言なのか、ぼやきなのか、読んでますよと言われると肩に力が入るのでああそうですか、程度のごあいさつを。

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