求めれば与えられる


十年近く認定看護師養成コースの講師を担当しているので、認定資格をとった看護師の活躍に、感動を覚えることもしばしばあります。乳がん看護認定看護師の資格を取得したOさんは、勤務していた市民病院に戻りました。その病院では、乳がん患者の治療は、五名の消化器・一般外科医全員が、それぞれの流儀で担当していました。消化器・一般外科医は、急性虫垂炎、痔、鼠径(そけい)ヘルニア、胆石など、がん以外の病気の外科手術、胃がん、大腸がん、乳がんなどの手術、検査、抗がん剤治療、そして、再発した後の緩和治療、さらに終末期の看取りまで、かなり広い領域を担当します。彼らは、大学の関連病院を数年ごとに移動させられるため、狭い領域を専門として絞り込むことができないという事情もあり、乳がん診療を専門とするわけにはいかないのです。その病院には、腫瘍内科医もいないため、抗がん剤治療は不十分と言わざるをえません。そんな状況を承知の上で、どうにかしようと決意して資格をとったOさんは、治療を受ける患者に丁寧に説明し、外科医師たちには、抗がん剤に関する最新の情報をわかりやすくまとめた資材を作って提供するなど、数年間、がんばりました。しかし医師は毎年移動し、乳がん診療を専門とする医師は採用されず、空しさの中で燃え尽きる寸前まで疲れ果ててしまったのでした。Oさんは先輩に相談、病院を辞め、看護系大学院修士課程に入学し2年間で規定の単位を修得し、がん看護の専門看護師になりました。現在Oさんはがん診療拠点病院に勤務し、腫瘍内科医、乳腺外科医などからなる乳がん診療チームのまとめ役として活躍しています。Oさんは目標をもって認定資格をとり、一度は挫折しかけましたが、専門資格に挑戦し、自らの付加価値を高め、そして患者のために還元しているのです。求め、捜し、門をたたき、自らの志を達成したOさんは、きっと多くの後輩の目標になって行くでしょう。

 

 

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投稿者: 渡辺 亨

腫瘍内科医の第一人者と言われて久しい。一番いいがん治療を多くの人に届けるにはどうしたらいいのか。郷里浜松を拠点に、ひとり言なのか、ぼやきなのか、読んでますよと言われると肩に力が入るのでああそうですか、程度のごあいさつを。

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