着実なる進歩で治療の思い強く


夏にASCOに参加した時の朝日新聞投稿記事です。今月は「アーカーブシリーズ:オンコロジストの独り言」をお送りしています。

今週はシカゴで開かれた米国臨床腫瘍学会(ASCO、アスコ)に参加しました。最新の成績が発表されるため、がん医療の領域では世界で最も注目される学界です、会期は五日間で日本からも数百人の医師などが参加します。すばらしい結果の発表では会場総立ちで拍手が鳴り止まないこともあります。肺がん治療に使われているゲフィチニブも十年前にこの学会で日本から報告されました。発売後ゲフィチニブは間質性肺炎という副作用が問題となり「危険な薬」とされ、患者が製薬企業を相手取って販売中止を求める訴訟を起こしました。しかし、治療効果は確実で、研究により副作用の出にくい患者、効果の出やすい患者が明らかになってきました。そのような成果もこの学会で日本の腫瘍内科医が報告してきました。今年は、ゲフィチニブの改良型であるアフェチニブを最初に使用すると抗がん剤を使用するよりも寿命が延びるという結果が注目を集めました。前立腺がんは骨盤、脊椎などの骨に転移があっても男性ホルモンの働きを押さえる薬により、かなり長期間にわたり元気な状態を保つことができます。ホルモン剤が効かなくなった後、抗がん剤を使用する場合もありますが、生涯抗がん剤治療を受けない患者もすくなくありません。しかし、今回の発表結果でその状況が変わるかも知れません。すなわち、やや広い範囲に転移が及んでいる前立腺がんの患者では、最初から、抗がん剤「ドセタキセル」をホルモン剤と併用する方が、ホルモン剤だけで治療するよりも寿命が延びるというのです。患者にとっては、寿命が延びると言われてもできれば抗がん剤治療はしたくないという思いがあるでしょう。しかし、私たち、腫瘍内科医にとってはドセタキセルは使い慣れた薬です。今後、泌尿器科の先生から治療を依頼されることも多くなることでしょう。毎年ASCOに参加し、がん治療の確実な進歩を学ぶと患者に役立つ治療をしなければという想いを強くするのです。

 

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投稿者: 渡辺 亨

腫瘍内科医の第一人者と言われて久しい。一番いいがん治療を多くの人に届けるにはどうしたらいいのか。郷里浜松を拠点に、ひとり言なのか、ぼやきなのか、読んでますよと言われると肩に力が入るのでああそうですか、程度のごあいさつを。

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