SABCS恒例CASE DISCUSSION


サンアントニオ乳がんシンポジウムは、毎年、少しづつ、時に大幅にプログラムが変化しています。学会は時代のニーズに応えて、あるいは時代の変化を先導する形で成長するのは当然です。しかし、SABCSで長年、変わらないのが、二日目、三日目のお昼に開催されるCase Discussionです。このブログでも過去に何回か、触れていますが「一流の研究者は一流の臨床家」というのがこのセッションに参加するたびに、再認識されます。モニカモロウ、リサカリー、マシューゴエツなど、よく知られた人たちが、ぶっつけ本番で会場からの治療相談に応じました。今回関心したことは、今日の午前中のジェネラルセッション3の発表を聞いて、判断が難しくなったという2症例が提示されたことです。30才女性、BRCA1変異のあるT2N1M0のTNBC.。午前中のセッションで、イギリスの無精髭TUTTの発表で、カルボとドセタキセルの比較試験、BRCAの変異ありでは、カルボが良いと。症例数も少なく、エビデンスとしては弱いものですが、それでも、今日の今日なので、質問者も「カルボを含んだ術前化学療法は必要か?」との問いかけでした。リサカリーは、自分でも、コンサバですから、といって、手術→パクリ・ACみたいな標準を選ぶべき、との答え。つまらん、こいつのはなしはいつもつまらん、そんなんだったらGKITでもいえる。マシューは、術前のカルボ+パクリも選択肢の一つでしょう、とのよい答え。これぐらいの柔軟性がいいなあと思いますね、腫瘍内科医は。もう一例は38才、8cmの大きさの局所進行乳がん、ER陽性、PgR陽性、HER2陰性、肥満。術前化学療法でAC・パクリをやって手術した。その後の治療、どうしようか。今日の午前中のセッションで発表されたSOFTトライアル、TAM vs. TAM+LHRHアゴニスト、全対象症例では、PFSのP値は0,1、35才以下のサブセットでは有意差あって、併用がよろしという結果。しかし、それよりも、エキセメスタン+LHRHアゴニストの方がよいことが、今年のASCOのプレナリーセッションで発表されたのは、ご存知のとおり。しかーし、肥満女性では「おおおんな、そうみにAIまわりかね(大女AI不可循環於総身)がABCSG12で示されているので、この症例では判断が難しい。AI+LHRHアゴニストがよいか、それともTAM+LHRHアゴニストがいいのか。意見がまとまらなかったが、TAM+LHRHアゴニストで良いだろうと私は思った。そんな感じで1時間ちょっとのセッションで、9例のディスカッションがあって「臨床医の真髄は科学的推論である」ことがあらためてに示されました。若い先生とかに、CASE DISCUSSIONは、がちんこ道場だから、出た方がいいよ、と毎回勧めるのですが、日本の若者はどうも臨床の現場での真剣勝負は興味がないようで日本人の参加者はまばらでした。ざーんねーん!

投稿者: 渡辺 亨

腫瘍内科医の第一人者と言われて久しい。一番いいがん治療を多くの人に届けるにはどうしたらいいのか。郷里浜松を拠点に、ひとり言なのか、ぼやきなのか、読んでますよと言われると肩に力が入るのでああそうですか、程度のごあいさつを。

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