インフルエンザA型(香港)が流行っているとマスコミが大騒ぎ。近隣の病院でも、学校でもインフルエンザ患者が急増している。もともと重症化して大パニックになったこともある香港型だから、その流行を予測して、今年使用されているワクチンは、この型にはあっているけど、それでも、重症化する可能性は高いと知られていた。しかし、11月から12月にワクチン接種を勧める話はマスコミではまったく取り上げなかった。だから、テレビでも言っていませんから、今年はワクチンは打ちません、という人は多かった。ワクチンを接種しても効果がない、ということではないのに、予防医学の考え方が浸透していないようだ。朝のワイドショーなども、騒ぎを派手に報道して、視聴率を上げることがプライマリーエンドポイント、公衆衛生学的観点から、備えてワクチンを打ってください、というような、教訓めいた話題を提供しても、すぐにチャンネルを変えられてしまうから、結局、大変だ! 大変だ!という論調で、視聴者の恐怖心を煽る手法を取らざるをえない。これは、映画でも、テレビ番組でも、「評判になったら観る」という安易な行動決定パターンをとる人が、マスコミによる操作で定着してしまっている。予防は、発症前の対策なので、ピンとこないことが多いのだが、がんに関して言えば、肺がんにならないようにタバコはやめよう、胃がんにならないようにピロリ菌を除去しよう、乳がんにならないようにアルコールは控えよう、子宮頸がんにならないように「姦淫」はやめよう、いずれも重要な予防医学である。恐怖心や、虚栄心が刺激されなくても、科学的な報道に基づいて、理性的に正しい行動をとれるような、成熟した社会は程遠い。