何を言いたいんだかわからない時


St.Gallen2015の内容について京都、名古屋、熊本、東京などで話してほしいという依頼があります。光栄なことで喜んでお引受しました。今までもSt.Gallenの後にはこのような依頼がありまして必ずタイトルは「St.Gallen 20XX」として内容そのものずばりで一番わかりやすいと思うのでなんのためらいもなくそのようにしてきました。この手の講演はこちらが望むと望まざるとにかかわらず製薬企業がスポンサーとなります。参加者(聴衆)もそれは承知で講演はただで聞けるしスポンサーが懇親会の場まで設定してくれます。まあ、そのような風習が浸透しており、勉強は自分の金でするものだ! などとややこしい事をいう人もいないので製薬企業スポンサード講演会というのが当たり前という文化になっています。しかし、私も国家公務員であった時代から全国47都道府県を制覇するほど各地の講演会には出向いて来ましたし、講演料とか交通費は製薬企業のお世話になってきました。それが悪いという文化もありませんでしたし、講演のスライド準備とか、話の内容建てとかは、いつも工夫をして聞いてくれる方々に感謝されるように頑張ってきたので、それなりの報酬をうけとることは知的労働に対する正当なる対価と考えています。そんな姿を北大の加藤ちゃんは揶揄して「空飛ぶ治験屋」と命名してネガティブキャンペーンを張られてしまったのは2002年教授選敗退の年のことでした。そのキャンペーンが正しくなかったことはその後の歴史が物語っているところですが、世の中はそういうものです。それで話を講演タイトル「St.Gallen 2015」に戻します。今年は、TKD社が学会発表された内容を自社の営業に都合のいいように書き換えて講演会で使ったというおちゃめなことをやってくれたので、「学会発表内容を自社製品のプロモーション(販売促進)に使ってはいけない!!というプロモーションコードが製薬協でできて、自らを戒めて深く反省する、ということになりました。そのコードが間違って解釈されているようで「講演会に学会名を入れてはいけない」となったようで「St.Gallen2015」は、まかりならん、ということになったのですね、おかしな話! そのことは後でわかったことですが、打ち合わせの段階で、各社の担当者が入れ替わり立ち代わりやってきて講演のタイトルを「乳がん診療最前線の話題から」とか「世界の標準治療からみた乳がん診療」とか「乳がん標準治療2015」などでいかがでしょうかといってくる、なんか煮え切らない、引きつった笑顔で、うじうじ、もそもそ、へらへらというので「何を言いたいんだかわからないんだけど、St.Gallen2015の話をしてくれというから、そのように、わかりやすいタイトルをつけてなんでだめなの?」と聞いてもわからない、理由を聞いてもわからない、にゃんにゃんにゃにゃん、笑っているばかりのぜねこちゃん♪、という感じなのです。麒麟のお巡りさんから話を聞いて、納得はできないものの理解はできたので、「そんなことは論旨のすり替えではないか! 学会発表の内容を不正に変更して発表した悪行を禁止するのは当然であるが、それと学会発表内容は講演するなとか、学会名の一部をタイトルに入れてはならんという話は、全然、関係ない話ではないのでしょうか?」と担当者諸君に言うと、自分たちもそう思います、とはっきり言います。彼らはまともです。しかし、こころ貧しく品性さもしい製薬企業社員が販売促進を強いられて苦し紛れにやってしまった悪行は「われわを試みに合わせず悪より救い出したまえ」と祈り、悔い改めなければなりません。

投稿者: 渡辺 亨

腫瘍内科医の第一人者と言われて久しい。一番いいがん治療を多くの人に届けるにはどうしたらいいのか。郷里浜松を拠点に、ひとり言なのか、ぼやきなのか、読んでますよと言われると肩に力が入るのでああそうですか、程度のごあいさつを。

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