今年はメラノーマに対するニボルマブとイピリムマブのランダム化比較試験、小児がん治療のサバイバーの長期フォローアップ研究、頭頸部扁平上皮がんにたいする頚部リンパ節郭清を最初からやる場合とリンパ節転移が出てからやる場合とのランダム化比較試験、脳転移に対して低位脳照射(ガンマナイフなど)に全脳照射を加えるか、加えないか、のランダム化比較試験の4演題、内容も充実していて疾患領域、地域性のバランスも良い選択でした。ランダム化比較試験が臨床研究でもっとも重視されるのは、バイアス、偶然を排除し、真実をあぶり出せるからです。4演題のうち小児がんサバイバーの追跡研究は、この時点ではランダム化比較という手法では検証できない臨床的命題を対象としていますが、他の3題は、臨床的平衡がなりたつ臨床的命題を対象としており、同意取得など、かなりの困難さを伴うものですが、見事にやり遂げたという感じです。現実の厳しさを知らないで育ったぼんぼんのように、ランダム化比較試験の意義や困難さも知らず、与えられた宿題をこなしただけで、いいこいいこ、と褒められて有頂天になっているようでは話になりません。もっとも宿題すらきちんとできないようでは困りますけどね。最初の演題は、今、もっともホットなホットモットな「Immune Checkpoint Blockade」がテーマであり、10社以上が関連薬剤の開発にしのぎを削っており、日本からも多数の製薬企業の開発担当者が最前列近くに陣取っておりました。彼らは、商売に結びつく自らの仕事、会社の死活、自らの将来、家族の生活がかかっているから必死で、会場がオープンするや、バーゲン百貨店玄関の破廉恥おばさんさながら我先に、と席を陣取っていました。また、最初の演題が終わると、大潮が引くようにどーっと会場を出て行き、約1/3の席が空きました。彼らにとっては、それ以降の演題は全く興味がないのですからそれも仕方ありません。オンコロジーを広く、深く学ぼうという姿勢は彼らには必要ないのであり、それで当然です。しかし、4演題の最後にDr.Leonard SaltzがPerspectives on Valueというタイトルで、要するに「薬が高すぎる!! どうにかしなくては」というレビューがありました。この問題は、アバスチン問題で、大間のマグロとマクドナルドハンバーガー、あるいはメルセデスベンツSクラスとスズキスイフトの比較を例にとり「値頃感(ねごろかん)」をテーマに、私もさんざん主張してきていますが、ASCOでも同じ切り口での問題提起がなされました。しかし、企業の開発担当者の中には「薬価は私たちには関係のない話、管轄外ですよ」と言い切るぼんくらちゃんもいるぐらいで、なかなか現実の厳しい問題に目がむいていないようでした。今回は、乳がんも肺がんもプレナリーセッションには取り上げれていませんので、カピパラ・ホズミン・ジュニアは部屋で自習していたそうです。それもいいかもしれませんが、学会の目玉であるプレナリーセッション、25年間、ASCOで学んできて、いつも強い感動を覚えます。