1999年、国立がんセンター中央病院では、現在の病棟完成を機に外来治療へ全面的に移行し、私が責任者を務めていた乳腺・腫瘍内科では、乳がん治療では転移性乳がん患者を対象としてパクリタキセル週1回点滴を開始した。この治療は、脱毛や手足のしびれは強いものの、吐き気はほとんどなく、奏効率の高い優れた治療として注目されていた。しかし、毎週点滴をしなくてはならないという不便さがあり、近在(東京都中央区、江東区、港区あたり)の住民にとっては好ましい治療だが、遠方に住む患者は簡単には利用出来ない。九州から毎週日曜日に飛行機で上京し、翌日、診察、点滴を受け、夕方にホテルに戻り、翌日帰省するという二泊三日ツアーを1年近くにわたり繰り返した患者もいた。遠来の患者の口からは感謝の言葉と同時に、地元にも外来治療ができる病院があればいいんだけどね、どうにかなりませんか、という話もよく聞かされた。(以下次号)