米国(テネシー州ナッシュビルにあるヴァンダービルト大学)への4年間の留学を経て、国立がんセンター病院内科の医員としての勤務が始まったのが1987年9月1日であった。国立がんセンターでは、臨床試験への取り組みが本格的に始まった頃で、JCOG乳がんグループも比較試験の結果が出始めていた。帰国した私はデータ解析を担当するように阿部先生から指示をうけたが、ランダム化すらおぼつかない試験のデータは、なさけないものであった。そこで学んだことは、「臨床試験は計画、実施、解析」の三拍子が大切ということであった。その後、ハーセプチンの第I相試験、NSASBC01試験といった重要な試験の責任者を任せられた3-5。これらの経験を通じて得られた全国の、そして世界の臨床研究者との交流は今でも私の財産である。(以下次号)
3 Tokuda Y, Watanabe T, Omuro Y, et al. Dose escalation and pharmacokinetic study of a humanized anti-HER2 monoclonal antibody in patients with HER2/neu-overexpressing metastatic breast cancer. Br J Cancer 1999; 81(8): 1419-25.
4 Watanabe T, Sano M, Takashima S, et al. Oral uracil and tegafur compared with classic cyclophosphamide, methotrexate, fluorouracil as postoperative chemotherapy in patients with node-negative, high-risk breast cancer: National Surgical Adjuvant Study for Breast Cancer 01 Trial. J Clin Oncol 2009; 27(9): 1368-74.
5 小崎 丈太郎著、阿部薫編. N・SAS試験 日本のがん医療を変えた臨床試験の記録. 東京: 日経メディカル開発; 2013.