しゃんしゃん大会の副産物


数十年ぶりでしゃんしゃん大会に参加しました。聴衆は当初250人から300人と聞いて言いましたが、どうやら200人にも達しない位だったようです。つまり出ると言って出ない人、出なくてももらったチケットを使って銀座でお買い物っていうお茶目な活躍をしている人もいたとかいないとか。それはそれでいいとしていいとして、しゃんしゃん大会の副産物はと言えばそれは乳癌学会の古手・若手・苦手・渋手・甘手に会えること、いろいろと突っ込んだ話ができること、最新の裏話を聞くことができることなどです。話題としては「専門医制度の見直し」に興味を持ちました。外科の二階建て、内科の二階建て、病理、診断は追い出して、という決まりかけた話を、不首尾に終わった専門医機構のがらがらぽんに合わせリセットして出直そうという機運がすこし盛り上がっていました。そのほうがいいと私も思います。というのは、乳がん診療は、もはや、外科も内科もないし、画像診断、病理診断も、乳がん診療に携わる医師は心得て置かなければならないし、直接関与しないまでも、深く理解しておかなければならないものです。また、HE染色とか免疫染色で病型を分類する時代はもう終わる。遺伝子発現を「毎日の診療のなかで確認して最善の治療方法を構築する」日はもうすぐそこにきています。なので、治療に直接関与していなくても重要なメンバーとして、組織遺伝子診断を担当する医師も不可欠な存在であります。画像診断担当医師も同じです。変に国民に迎合して「国民の目から見てわかりやすい専門医」と言いますが、状況を分かっていない国民に「直接治療に携わらない医師でもチームのメンバーとして重要なのです。」ということを分からせればいいのであります。教えてあげればいいのであります。乳がん診療に専門的に携わる医師は、外科の二階でも内科の二階でもない、一階から「乳腺科」としなければいけないのです。この提案に対して、崩壊した(旧)専門医機構は、「婦人科は婦人科として独立していい。その理由は、婦人科は、子宮、卵巣、など複数の臓器を対象としているから。しかし、乳腺科は乳腺ひとつの臓器しか対象としていないから認められない。」ということでした。また、「泌尿器科は泌尿器科として独立していい。その理由は泌尿器科は、腎臓、腎盂、尿管、膀胱、前立腺、精巣など複数の臓器を対象としているから。しかし、乳腺科は乳腺ひとつの臓器しか対象としていないから認められない。」ということでした。一つの臓器? ああーん?? ひとつ、二つと臓器を数えろって? そういう問題ではないのです。乳がんでも、若年者発症の場合と超高齢者の場合、ルミナルの場合とHER2の場合、終末期の対応と初期治療の取り組み、手術をする場合と薬物療法をする場合、また、オンコプラスチックサージェリーをする場合など、乳腺科医師に求められる素養は素養は間口も広く、奥行きも広いのです。ですから、国民の目から見ても「一階からの乳腺科」の位置づけが必要なのであります。

乳がん患者数は確かに急速に増えています。ついこの間まで年間3万人とか5万人とかでしたが、最近のデータは年間10万人を超えるそうです。外科の二階建てにこだわっていた間に、乳がん診療に参入する医師はどんどん減っているという現実は、結局、国民に不利益をもたらしているのであります。こんな話を、今日は、久しぶりに会った仲間と茶店(さてん)でねばって話して、See you in San Antonioといってお別れしてきました。

投稿者: 渡辺 亨

腫瘍内科医の第一人者と言われて久しい。一番いいがん治療を多くの人に届けるにはどうしたらいいのか。郷里浜松を拠点に、ひとり言なのか、ぼやきなのか、読んでますよと言われると肩に力が入るのでああそうですか、程度のごあいさつを。

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