今週月曜日に東京の名門病院で研修をしている若手医師が当院に見学にきました。若手医師は乳腺外科を志望しているとのことですが、現在の病院では画像診断医がMMGの読影や超音波診断、針生検を行い、薬物療法は全て腫瘍内科医が担当しているそうです。それはそれで正しい姿ですが、若手医師にしてみると今後の我が身の姿、自分の役割をどう描いていったらいいのかと、深く深く考える契機になったようです。そこで上の図のような私の持論を絵に描いて渡して説明しました。これは乳癌診療のみならず他臓器のがん診療における役割分担の変遷としても当てはまることだと思います。20世紀、昭和の時代は、乳腺外科医が診断から終末期医療までを担っていました。ところが、私のような腫瘍内科医が薬物療法を担当、P子先生のような診断医が画像診断、針生検を担当、となっていると、らっきょうの皮むきのように、皮をむいてむいてむいていくと中心に小さく残る領域は、「手術」であり、乳房温存術、センチネルリンパ節生検、腋窩郭清 などの技法です。乳房全摘後の再建は、人工物を使う手技も、自家組織を使う手技も「形成外科医に丸投げする」という選択肢を乳癌学会はとりました。しかし、ツバル(海面上昇により国土が縮小した島国)のように領域が狭く狭くなってきた状況で、新たな領土となりうる、人工物を使用した再建術、これを手放したのは実に痛いのではないでしょうか。しかし、これから乳腺外科医を目指す若者は、oncosurgeryだけではなく、plastic surgeryも、我が身の修練の対象とするべきであると思います。諸外国ではすでに「oncoplastic surgeon」という守備範囲で乳腺外科医が活躍を開始しており、先日、ドイツデュッセルドルフに見学に行った女医さんから来たメールには「渡辺先生のおっしゃるとおりドイツでは、薬物療法をやっている外科医はいなくて、外科医は、再建手術まで担当しています。」ということでした。次世代を生きる現在の若者は、新しい姿を模索するべきであり、現在の20世紀型の乳腺外科医はワーキングモデルにはなり得ない、と心得るべきでしょう。