標準治療の誤解


謹賀新年 波乱の年、変革の年、2018年があけた。昨年、癌治療の領域では「標準治療ではなく特別治療をしてほしい」と希望する患者の話題がよく語られた。「標準」は、松・竹・梅の梅、特上・上・並の並だから、松の治療、特上の治療をお願いします。先生、標準じゃあなくってさ、家内には特上の治療をお願いしまっすよ、ね。金ならいくらでも出すからさ。と言うような文脈で「標準治療」が完全に誤解されているのである。英語では決して「standard treatment」なんて言わない。「”State of the Art” tretment」という。the Artとは、人間の技、人間が工夫して成し遂げたこと、state とは、そういった状態、その状態、そのレベル、ということ、theがつくと、まさに今の状態、まさに今のレベルという意味、つまり、人間が工夫して、努力して作り上げてきた技の最先端の状態、ということである。人間の工夫、とは、臨床経験:ひとりひとりの患者の治療を工夫して積み重ねて、もっといい治療を模索しながら到達したレベル、臨床研究:じゃあちょっと同じような感じの患者の良さそうな治療をつづけてやってみるか、という沢山の経験から得た確信レベル、臨床試験:科学的、すなわちバイアス、偶然を極力排除した方法で導き出した真実レベル、この三つである。人間の工夫、人類の知恵、を、経験→研究→試験、という形で積み上げて、神が与えてくれた「真実」を解明し、達成したレベル、それが、「”State of the Art” tretment」である。state (状態)は、日々刻々変化し、日進月歩、月進年歩で進歩していくのだ。人類の知恵が積み重なっていくのだ。だから、「”State of the Art” tretment 」といえば、自ずから最高の治療という意味がにじみ出てくる。ところが、だれが始めたのかわからないが、「標準治療」という訳語を使うようになって、「標準は梅だから最低レベルでしょ」、「標準ではなく、もっとよい治療を」、「保険がきかなくてもいいから標準じゃなくて、特上を頼みます」というような、へんちくりんでとんちんかんな治療評価が浸透した。そこにつけ込んで「保険が効かないのはよい治療」といって、間違った免疫療法(例:活性化リンパ球注入、臍帯血移植・・・)とか、全身に転移しているのに、放射線をあちこちに当てる年度末の道路工事のようなことを¥を医療機関が行っているインチキ治療や、鮫の軟骨、アガリクス、プロポリス、フコイダン・・・など、「サプリメント」という範疇にいれて、「癌に効く」と売りまくる悪徳商法があとを絶たない。癌医療を供給する側は、「”State of the Art” tretment」を追求して、提供しても、それを受ける側(いっぱんピープル:いわゆるぱんピー)の「Stage of the inteligence」つまり、頭の出来具合が悪いのである。頭のでき、とは教養のなさ、である。教養のない国民の知的レベルは、年末年始の「おわらい番組」を見れば分かる。どのチャンネルも、さんま、さんま、お笑い芸人、馬鹿話で大口あけて手をたたいて喜んでいる、まるでチンパンジーの様なひな壇芸人にが、日本国民の教養レベルだとすれば、今年も、「先生、特上治療、たのんまっせ」はあとを絶たないだろう。

投稿者: 渡辺 亨

腫瘍内科医の第一人者と言われて久しい。一番いいがん治療を多くの人に届けるにはどうしたらいいのか。郷里浜松を拠点に、ひとり言なのか、ぼやきなのか、読んでますよと言われると肩に力が入るのでああそうですか、程度のごあいさつを。

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