当時は、がんの患者にがんとは言わない、つまり病名告知をしない時代でした。肺の扁平上皮癌の場合は「肺アスペルギルス症です」といって、「肺にかびがはえた」と言いました。抗がん剤を「かびを抑える強い薬」と言うのです。この一連のうそのつき方をオーベンに教えてもらい、うまく言うように何度も練習しました。夕方、オーベンと私、相手は患者だけ、家族も看護婦もいない暗くなった外来でのムンテラ。緊張して汗(^0^;)びっしょり。当時はこんな絵文字はありませんでした。終わったあとで「おまえ、うまいなあ」とつねた先生に褒められました。というより、おだてられたのを今でも覚えています。