オンコロジストの生い立ち(9)


大学病院での研修は続きます。病棟では、渡辺くんは、がんに興味があるんだね、とみやもと先生に言われて、そう思ったので、はい、と答えてから、肺がんの患者を担当することが多くなりました。80歳近くの肺小細胞癌の男性、糖尿病もあって、カリウムも低くて・・・。かみじまオーベンとセットで診ていた患者さんですが、かみじま先生から「先生、謎解きが必要だよ」といわれ、図書館に行っていろいろと調べてみたら、どうもACTH(副腎皮質ホルモン刺激ホルモン)という、普通は脳下垂体前葉から分泌されるホルモンを、肺がんが作る、という、訳の分からない病態「ホルモン産生腫瘍」というものだ、ということが分かりました。翌朝、かみじまオーベンに報告すると、そーだね、先生、よく調べたね、すごいね、とおだてられました。結局、そのおじいさんは、2か月ほどで亡くなりましたが、がんがホルモンを作る、ということに、ものすごく興味を感じたことを覚えています。それと、また、おだてられたことも。

投稿者: 渡辺 亨

腫瘍内科医の第一人者と言われて久しい。一番いいがん治療を多くの人に届けるにはどうしたらいいのか。郷里浜松を拠点に、ひとり言なのか、ぼやきなのか、読んでますよと言われると肩に力が入るのでああそうですか、程度のごあいさつを。

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