臨床試験が明日からの治療を変える


ASCOプレナリーセッション二番目の演題は、小児の横紋筋肉腫の抗がん剤治療に関するものです。横紋筋肉腫の患者の約70%が6歳以下(1歳未満は5%)であり、乳児期、5歳から7歳頃および10歳代に多く発生しますが、まれに成人に発生することもあります。横紋筋肉腫は、小児がんの2.9%を占めるに過ぎない比較的まれな腫瘍ですが、筋肉など体の軟らかい組織から発生する悪性腫瘍(軟部肉腫)の中では、小児で最も頻度の高いがんです(国立がん研究センター がん情報サービスより引用)。

1年間の発症数は、アメリカで350人、EUでも320人、日本では130人ぐらいと、大変少ないがんです。とても進行の早いがんですが、手術+放射線および集中的な抗がん剤治療により7-8割の小児は治るとされています。ヨーロッパを中心とした14カ国にある小児がん治療病院108からなる「ヨーロッパ小児軟部組織肉腫研究グループ」では、2005年からこの試験を開始しました。年令0-21才のハイリスク横紋筋肉腫、はじめて治療例を対象。イホマイド+ビンクリスチン+アクチノマイシンD+アドリアマイシンによる6-8ヶ月に及ぶ抗がん剤治療、手術、放射線照射が終了した時点で、臨床的完全寛解(横紋筋肉腫が画像検査で全て消失している)症例をランダムに、維持療法としてビノレルビン+経口エンドキサンを6か月間加える群、と加えない群にわけて、DFSとOSを検討しました。少ない疾患だし、激しい抗がん剤治療を6-8ヶ月実施した後、さらに6ヶ月間の抗がん剤治療をやるか、やらないか、という比較試験なわけだから、「もうこれ以上、うちの子をいじめないで」というような親の感情が優先し、将来の子供ためにエビデンスを残しましょう、維持療法をするのがよいか、無意味かは、わからないのです、というような説明で同意をえるのはさぞかし難しかっただろうにと、思わず研究者たちに共感してしまいます。努力の甲斐があって得られた結果は、なんと、維持療法を加えた群の方が、生存率でハザード比0.52、と明らかに長生きするというものでした。この結果は驚きです。小児横紋筋肉腫の明日からの治療が完全に書き換えられる、これぞ、practice changingであります。

投稿者: 渡辺 亨

腫瘍内科医の第一人者と言われて久しい。一番いいがん治療を多くの人に届けるにはどうしたらいいのか。郷里浜松を拠点に、ひとり言なのか、ぼやきなのか、読んでますよと言われると肩に力が入るのでああそうですか、程度のごあいさつを。

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