すったもんだのあげく、昨日で東京都中央区築地5丁目の築地市場が幕を閉じました。都バス停留所も「築地中央市場前」から「国立がん研究センター前」に変わるんだって。1987年9月米国留学から帰国して国立がんセンター腫瘍内科医師として勤務することになり9月1日に島田安博先生(現高知医療センター副院長)と並んで末舛恵一院長から辞令を受け取りました。住居はがんセンター敷地内の33㎡1DK 、築40年の官舎でした。職住近接、安価な家賃ということでしたが、築地市場に面する官舎の住居環境は劣悪でありました。午前3時を過ぎると築地市場には全国から大型冷蔵トラックがぞくぞく集まってきます。市場が開くまで、トラックは近くの路上にずらりと駐車、官舎のガラス越しにはヘッドラライト、テールライトがぎらぎら光り、排気ガスがもろに換気扇から室内に流れ込みます。騒音も当然凄まじくエンジン音、クラクション音が鳴りまくりです。貧乏医員としては他に住居選択肢はなく忍耐の日々でした。「渡辺先生、おんぼろ官舎に入居したんだって!」と病棟で話題になったようで、医師官舎よりはグレードの高い看護婦宿舎に住む中澤静香さんという看護婦がピンポーンと訪れ、玄関から全てが見渡せる我が家をまじまじとながめ、「ほんと! ひどい部屋ですね!」と感想を述べて帰って行ったのを覚えています。そんなほろ苦い思い出の詰まった築地の町並みも大きく様変わりしつつあります。