昔の名前で出ています


私はフルベストラントの国際治験に20世紀の終わりに携わりました。タモキシフェン1錠(20mg)内服とフルベストラント1本(250mg)筋注との二重盲検試験でしたから、対照群は「タモキシフェンの本物内服とヒマシ油をフルベストラントの偽薬(プラセボ)としてお尻に注射する」、試験群は「タモキシフェンの偽薬とフルベストラントをお尻に注射する」というものでした。しかし、この試験の結果、フルベストラント(250mg)はタモキシフェンに勝てず、欧米では承認されたものの日本では承認されませんでした。欧米で承認された理由ははっきりとはわかりませんが、新しい作用機序の薬剤、という雰囲気で、一気に発売に至ってしまったのか、リストラマダカ社の影響力(注:リストラマダカ社の前身は、ICI (インペリアル・ケミカル・インダストリー)、つまり王室御用達の化学会社だったわけですから、臨床試験の成績が乏しくても権威で承認させてしまうぐらいのことはあったのかも知れません。がっかりするリストラマダカの開発担当者を(お尻に注射だけに)尻目に「やっとこれで患者を苦しめる必要がなくなった」と感じたのでした。また、当時から「お尻に筋注するというのは、薬剤として完成度が低いのではないの? 経口剤は開発できないの?」とリストラマダカの開発担当者には折々の言葉として語っておりました。しかし、その後、いつの間にか、お尻に2本の注射と1本の注射の比較で2本が勝った(COMFIRM試験)ということになり、2011年に日本でも発売されたのでした。以来、お尻の注射は複雑な思いを抱きつつ続けています。

投稿者: 渡辺 亨

腫瘍内科医の第一人者と言われて久しい。一番いいがん治療を多くの人に届けるにはどうしたらいいのか。郷里浜松を拠点に、ひとり言なのか、ぼやきなのか、読んでますよと言われると肩に力が入るのでああそうですか、程度のごあいさつを。

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