4月13日、浜松オンコロジーフォーラムを開催致します。
今回は、浜松にて乳腺外科に従事されていた松沼先生が経験された、アメリカ留学に関するご講演と、今回で第16回を数えるSt.Gallen International Breast Cancer Conference に、パネリストとして参加されている渡辺先生のご講演を予定しております 。医師、看護師、薬剤師、臨床検査技師、放射線技師、などの医療従事者から、学生、地元行政、製薬企業の方々まで、皆様、お誘い合わせのうえ奮ってご参加ください。


3年間の米国留学で学んだこと 松沼亮一
私は2015年11月から2018年10月までの3年間、米国 テキサス州 ヒューストンのベイラー医科大学に留学し研究生活を送りました。留学をするまでには多くの壁がありました。また、留学後も当然のことながら何一つ簡単なことはありませんでした。実際の経験談を交えながら3年間で挙げた研究成果についてお話ししたいと思います。その中で最も大きな研究成果はClaudin-low乳癌に関する研究です。まだあまりなじみがないタイプの乳癌かもしれませんが、全乳癌の7-14%と報告されており、その多くはトリプルネガティブです。Claudin-low乳癌は間葉系マーカーが強く発現しており、CD44、CD24といった表面マーカーも癌幹細胞のそれと類似しています。また、Basal-likeとはgene expression profileが異なるためにトリプルネガティブの中の別の一亜型として扱われます。我々はClaudin-low乳癌の増殖やEMTにおいてDPYSL3という蛋白が重要な役割をしているということを報告し、その成果が米国科学アカデミー紀要に掲載されましたのでこの内容も含めて講演させていただく予定です。
St.Gallen 2019 乳がん初期治療 これからの方向性 渡辺亨
1978年に第1回を開催して以来、今回で第17回を数えるSt.Gallen International Breast Cancer Conference が今年も3月20-23日 オーストリアのウィーンで開催されます。今回のキャッチフレーズは“Estimating the magnitude of clinical benefit of systemic and local therapies in patients with EBC”「早期乳がん患者における全身的および局所的治療の臨床的恩恵の大きさを評価する」です。ここで注目したいことは、全身的治療すなわち薬物療法が局所的治療すなわち手術、照射の前に位置されていることです。このことは、全身的微小転移を撲滅する薬物療法の意義が、手術などの局所的治療を凌駕するものであるという認識を明確に物語っていると言えるでしょう。現在一般的に用いられている術前、術後薬物療法とか、術後補助療法というような手術を第一義的治療と位置づける考え方は急速に衰退していると言えるのではないでしょうか。ちなみに2017年の第16回のキャッチフレーズは”Escalating and De-Escalating Treatment in Early Breast Cancer across Subtypes and Treatment Modalities”でした。まさにキャッチフレーズの変容は時代の趨勢を物語っているように思います。さあ、皆さんもご一緒に新しい時代に旅立とうではあーりませんか!!